岡本清一記念講座 Seiichi Okamoto Memorial Lectures

EVENTS

「日本と世界を考える」
初代学長岡本清一の掲げた教育理念「新しい人類史の展開に対して責任を負い、日本と世界に尽くそうとする人間の形成」をさらに力強く継承するため、「日本と世界を考える」連続講座を開催しています。「日本と世界との関係」「自由」などをテーマにし、京都精華大学の社会的意義を問い直し、新しい大学像を見つけ出す機会となっています。

過去の講座一覧

第13回 2022年1月21日 (金)18:00~19:30
「多様性の中で人を育てる」

講師:小林りん氏(ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事)、ウスビ・サコ(本学学長)【対談】

ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事の小林りん氏を招き、第13回目の岡本清一記念講座を開催しました。アフリカにルーツを持ち、表現・リベラルアーツ・グローバルを教育の中心に掲げ、「表現で世界を変える人」を育てる京都精華大学の学長ウスビ・サコ(当時)と、自ら成長し続け、新たなフロンティアに挑み、共に時代を創っていく「チェンジメーカー」の育成をめざすユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパン代表理事の小林りん氏が、多様な人々が暮らす社会のより良い姿について語り合いました。

第12回2020年12月19日(土)11:00~12:30
「分断は止められるか -いま、表現と自由を考える-」

講師:坂本龍一氏(音楽家)、ウスビ・サコ(本学学長)【対談】

2020年は、人間の尊厳や社会のあり方について、これまでにない劇的な変化や議論のうねりが国内外で様々な形で生じた1年間でした。アフリカにルーツを持ち、表現・リベラルアーツ・グローバルを教育の中心に掲げる京都精華大学の学長ウスビ・サコと、音楽家としてNYを拠点に世界的な表現活動を続けながら社会にメッセージを発信している坂本龍一氏が、「人間・差別・表現」をキーワードに今日の世界と日本をひもとき、「表現」と「自由」について語りました。
本講座は、講座が始まって以来初となる、オンラインによる開講となりました。

講座アーカイブ動画・レポート

第11回2020年2月1日(2019年度)
「けれど、人間には仲間がいる。」

講師:いとうせいこう(作家・クリエイター)、ウスビ・サコ(本学学長)【対談】

世界中の難民キャンプや自然災害の被災地で「国境なき医師団」の取材を重ねるいとうせいこう氏が、本学学長のウスビ・サコと、現代のシビアな世界における「自由」と表現活動の持つ可能性について語りました。
いとう氏は、大学を、ひとりひとりが違うものを探しにくる多種多様な「個」が集まる場所であるとし、そこでお互いの違いを認めあい、その違いから様々なものを吸収して成長していくことの重要性を、会場に語りかけました。

講座レポート

第10回 2017年11月23日(2017年度)
公正と自由 —欲望の『奪い合い』から幸福の『分かち合い』へと財政を変える—

講師:井手英策(経済学者)

これまでの日本の社会制度は自己責任と経済成長を前提にされているとし、その道徳観がもたらす自殺者や生活保護バッシング、そして無謀な成長目標がもたらす誤った政策の危険性を指摘しました。
人口減少のなかで日本が目指すべき社会は、成長に頼る時代ではなくなったとの認識の下で「国民が抱える不安を解消するために、みんなの税でみんなを支え合う」という頼り合い・分かち合いの社会なのだと熱く訴えました。

第9回 2016年10月21日(2016年度)
近大日本と自由 —科学と戦争をめぐって—

講師:山本義隆(科学史研究者)

冒頭に本学の1968年「入学案内」に掲載されている岡本清一の序文を読み上げました。ついで、当時の大学の状況を語り、岡本の考え方へ賛辞を送りました。講演では近現代における科学技術の受容過程を考察することを切り口に、私たちの自由について話を展開させていきました。福島第一原子力発電所事故を経た今でこそ科学技術信仰に支えられた経済発展への歩みを止め、自由のあり方を考えるべきだと主張しました。

山本義隆講演録

第8回 2016年1月22日(2015年度)
戦争化する世界と日本のゆくえ

講師:西谷 修(思想家)

西谷氏は、安保法案が2015年9月に可決され、これからの日本が担うのは、「テロとの戦争」だと語りました。一方、アベノミクスの経済政策では、個人の社会的関係が崩壊、「日本人」という属性だけが頼りになり、ついには自己犠牲や滅私奉公といった発想が押しつけられるのではないかと懸念。この状況において、私たちができるのは少なくとも戦争をしたがる政府をつくらないということではないかと結びました。

第7回 2015年1月23日(2014年度)
シャルリーエブド襲撃事件を考える —表現の自由とテロリズム

講師
篠原ユキオ(マンガ学部 カートゥーンコース 教員/カートゥーン漫画家)
安田昌弘(ポピュラーカルチャー学部 音楽コース 教員/ポピュラー音楽研究家)
ウスビ・サコ(人文学部 教員/建築計画、コミュニティ研究家)

2015年1月7日に起こったパリの風刺週刊紙「シャルリーエブド」襲撃事件を受け、登壇者それぞれの立場から事件への知見を述べました。3者による意見交換では、政治的な言説やマスコミの報道だけではなく、事件が発生した社会的な背景やイスラム教についての本質的な理解が必要であることを改めて強調。文化と芸術を学ぶ本学の存在意義として、人と人を結びつける「表現」のあり方を確認し合う場になりました。

講座レポート

第6回 2013年10月5日(2013年度)
希望の青空 —日本国憲法を読みなおす

講師:石川九楊(書家、文字文明研究者)

改憲が現実味を帯びてきたいま、憲法を解き明かすことから、人間の自由を問いました。 大日本帝国憲法から、日本国憲法の前文、第9条に書かれたことばを解釈していくと、しだいに日本人の思想、精神性が浮き彫りになり、最後に石川氏は、第9条の文体は澄明だとし、「戦争は自分たちの代で終わらせよう、という思いが声になったもの。第9条は希望の青空のようだ」と高らかに言い放ちました。

第5回 2013年2月16日(2012年度)
現代における「自由」とは何か

講師:高橋源一郎(小説家)、古市憲寿(社会学者)【対談】

高橋氏は本学が開学した1968年当時の雰囲気に触れ、社会変革について語りました。現代の若者やコミュニティを研究する古市氏はこれまでの社会変革の手法に疑問を呈し、自由をはじめ、人間や幸福について、異なる視点から活発な意見交換が行われました。

第4回 2011年12月23日・2012年1月21日(2011年度)
[連続シンポジウム]戦後思想を問い直す視座 ~柴谷篤弘と中原佑介の仕事~

  1. われわれにとって柴谷篤弘とは「何」か——現代科学と社会の批判と実践
    出演:林 真理(科学技術論・生命論)、横山輝雄(科学哲学・科学思想史)、中島勝住(人文学部 教員/学校学)
    司会・コーディネイト:斎藤 光(ポピュラーカルチャー学部 教員/生物学史・性科学誌・近現代文化誌)
  2. 批評の技法(アート)——現代美術の実践とことば/中原佑介の業績をたどる
    出演:加治屋健司(現代美術史、美術批評史)、林 道郎(西洋美術史、美術批評)、吉岡 洋(美学・芸術学、情報文化論)
    司会・コーディネイト:佐藤守弘(デザイン学部 教員/芸術学、写真史、視覚文化論)


11年3月に逝去した元学長の柴谷篤弘氏と中原佑介氏を追悼。戦後思想に新しい領野を切りひらいた二氏の業績をたどりました。生物学の第一人者でありながら、反科学論、反差別論、科学と社会の問題へと探究領域を広げ、鋭い発言を続けた柴谷氏と、理論的な批評や斬新な展覧会の企画によって日本の現代美術を先導した中原氏。気鋭の研究者たちが二人の思想や仕事を考察し、現代的意義を探りました。

第3回 2010年5月29日(2010年度)
自由の現在

講師:佐藤 優(作家、元外交官)

元外交官の立場から、国際社会において帝国主義を彷彿させる勢力均衡外交がよみがえり、そのような状況の下で各国が国家体制の強化に取り組んでいると説明された。加えてこの流れに排外主義が加わるとファシズムが生まれる危険性があると指摘。また日本における政権交代が沖縄基地問題にどのように影響するかも語られました。最後には、時間をかけて会場からの質問にすべて答え、その真摯さと博識ぶりに聴衆は感嘆しました。

第2回 2008年7月27日(2008年度)
世界を読み世界を書く —さまざまな高度、場所、時代から世界を俯瞰する—

講師:池澤夏樹(小説家)

異文化との出会いの中で考えて続けてきた経験を織り交ぜながら、2007年から刊行が始まった個人編集による世界文学全集の目指すものを語りました。すぐに楽しめるもの・即効性のあるものばかりが求められる消費社会になり、以前の教養主義的な文学全集は成り立たなくなってしまったとしながらも、「いまここで生きている人々、もっと言えば9・11以降の世界に向けた全集を作ろうと思った」と語りました。

第1回 2008年2月16日(2007年度)
アメリカとアジアの間で —日本外交の基礎観念—

講師:藤原帰一(国際政治学者)

近代以降の日本の世界観・政治思想の変遷をひもときながら、排外的なナショナリズムが台頭する現代に警鐘を鳴らしました。「自由や民主主義は西欧やアメリカの概念だとラベルを貼るのでなく、そこで展開された思惟の持つ力を、私たちは自分の頭で考えるべきだ」と呼びかけ、岡本清一への賛意を表しました。