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大手ゲーム会社のキャラクターデザイナーになるには?カプコンへ就職した卒業生にインタビュー

※サムネイル画像は本学キャラクターデザインコースの学生作品です

ゲームクリエイターは、今や男女ともに憧れる職業

中学・高校生の「将来なりたい職業」トップ10の上位にランクインする「ゲームクリエイター」や「絵を描く職業(漫画家、イラストレーター、アニメーター)」。京都精華大学でも毎年、多くの学生がそうした職業へ就いています。実際、どのような働き方をしているのでしょうか。また、どのようにして夢を実現したのでしょう。
今回は「ストリートファイター」「バイオハザード」「モンスターハンター」など、人気ゲームを数多く生み出してきた株式会社カプコンに就職し、キャラクターデザイナーとして活躍する京都精華大学の卒業生2名と、その上司である制作部の室長にお話しを聞いてきました。
 
カプコン本社のロビーには、これまで手がけてきたタイトルがずらりと並ぶ。
この記事の内容
・意外に!?ホワイトなカプコンの働き方
・私は「こうやってカプコンに就職した!」
・画力だけではない!ゲーム会社が求める力とは?
・これからゲームクリエイターを目指す高校生へ
・ゲーム系企業への就職実績

話を聞いた人

今回は未発表タイトルに関わるため、顔出しなし、ペンネームでの取材許可を得ました。
プロフィール1

Takaraさん
(マンガ学部カートゥーンコース 2015年度卒業)
 
学生時代は自宅から約3時間かけて通学していたという根性の持ち主。その根気強さは、自身の作品にも表れているとか。2016年にカプコンへキャラクターデザイナーとして入社。作品投稿型の就活サイトを通じて採用へ至る。

プロフィール2

Shineさん
(マンガ学部カートゥーンコース 2015年度卒業)
 
プライベートで絵を描くときの息抜きは、ペットをもふもふすること。やわらかい物腰とは裏腹に、制作へのこだわりは人一倍強い。2016年にカプコンへキャラクターデザイナーとして入社。学生時代はゲーム系の企業でアルバイト経験も。

プロフィール3

室長
 
制作部 第二制作室 室長。「ストリートファイター」「モンスターハンター」「デビルメイクライ」「ドラゴンズドグマ」などの各シリーズに携わってきた、キャラクター職のボス的存在。通勤途中はもちろん、帰宅後は時間を忘れてゲームに没頭する、公私ともにゲームを愛する男。

意外に!?ホワイトなカプコンの働き方

進行 いきなりですが、ゲームの開発現場というと、ハードな働き方をしているイメージがありますが……実際、どうなのでしょう?

室長 ゲーム業界って徹夜のイメージがあるかもしれないですが、彼女たちの勤務時間は、9時半から18時までです。マスターアップ(納期のこと)や締め切り前は遅くなることもありますが、基本は就業時間を守ります。カプコン自体は意外とホワイトなんですよ(笑)。

Takara 先輩方も、「体調悪いなら早く帰るんやで」ってやさしく声をかけてくれますね。体調面で融通がとても効く職場だと実感しています。
向かって右側が室長。これまでビッグタイトルのキャラクターを担当してきたスゴい人。左は卒業生のTakaraさん。
Shine 「身体が資本なんやから」と言われますね。誰かが誰かの仕事をするんじゃなくて、自分の代わりはいない、自分のもっているスキルは自分にしかないって考え方があると思います。体調管理も仕事のうちですね。

進行 安心しました。実際、彼女たちはどのようなゲームに関わっていますか?

室長 現在のゲーム開発は大型化しており、数年にわたってひとつのゲームをつくることも珍しくありません。彼女たちは入社して2年目になったばかりですが、入社して、新人研修終了後の初配属から同じプロジェクトに従事していて、未発表のものなんです。なので、そこは詳しい内容を公表できません(笑)。

Shine 作業の流れとしては、企画の方から「こういう目的のゲームだから、こんなキャラクターがほしい」と提案を受けて、それを形にしていくという感じです。

Takara ただ、キャラクターデザイナーだからといって受け身で仕事をするのではなく、「こんな仕事がしてみたいんです」と申告しておくと、そういう仕事を回してくださることもあります。得意なもののほうが効率が良いという考えですね。
Takaraさんと同期入社のShineさん。二人ともキャラクターデザイナーとして入社した。
Shine スペシャリスト気質の人は、好きなことを集中してやるほうが向いていますから、会社もそこを理解して任せてくれているように思います。

進行 人気の職業にありがちだと思うのですが、「憧れ」が強すぎるあまり、入社前とのイメージのギャップに悩みませんでしたか?

Shine イメージのすり合わせは、会社が研修時からしてくれていたので、大きなギャップはないですね。

室長 カプコンでは昔から、採用後の育成にも力を入れています。たとえば、絵がうまくても集団で働くことが苦手な人もいますよね。職場におけるコミュニケーション能力などを高めるために、グループワークなどを行う施策を導入しています。

進行 なるほど。本学でもコミュニケーションを高めるための講座は、学生からとても人気があります。

私は「こうやってカプコンに就職した!」

進行 お二人がカプコンさんへ入社したきっかけや理由はどういったものだったのですか?

Shine カプコンを志望したのは、同じカートゥーンコースに所属していたTakaraちゃんが勧めてくれたのが大きいです。
 
同じコースに、ゲーム会社を目指す友人がいたことで、良い意味でのライバル意識があったという二人。
Takara 私が先に内定が決まり、Shineさんにも向いているなと思ったので、声をかけてみたんです。私自身の就活は、ポートフォリオ投稿型の就職支援サイトを利用していて、カプコンの採用担当者がサイト上でポートフォリオを見てくださったことがきっかけになりました。

進行 学生時代の成果物をまとめたポートフォリオは、ゲームクリエイターに限らず、クリエイティブ系企業への就職活動では必需品になりますよね。本学でも、業界や職種ごとの傾向や対策を指導しています。数多くの企業があるなかで、カプコンを選んだ決め手はなんだったのでしょう?

Takara 高校生の時に、それこそカプコンの作品でモンスターってカッコイイな!と思ったのが、キャラクターデザイナーをめざすきっかけになりました。なにが良いって、あまり目の届かない足跡のような細部まで丁寧に作り込みがされていたからです。

Shine モンスター本体だけではなく、そのモンスターが生きている世界まで創っちゃうところだよね。

Takara そんなこだわりに感銘を受けて、自分もこういう仕事をしてみたいと思ったんです。

進行 では、就職活動は順調に進んだのでしょうか?

Takara いえいえ(笑)。大手に対して自信がなかったこともあり、就活をはじめた当初は、ベンチャー系のゲーム会社を中心に受けていたんです。けど、やみくもすぎて「なにがしたいのかわからないよ」と言われてしまいました。そのショックで吹っ切れて、今まで隠していたようなことも構わず、就職支援サイトに自分のすべてを書き連ねたんですよ。当時は「版権もの」の絵も描いていましたが、ただ描いているだけではファンと思われるだけなので、なぜ描いたのか、どういう思いで描いたのかも書きました。そしたら翌日に、カプコンから連絡がきたんです。
Takaraさんの学生時代のポートフォリオ。マッチングサイトを通じてカプコンの目に留まったという。
室長 もうひとりの採用担当と見ていたのですが、マッチングサイト上で見つけて「コレいいよね~」って。色味をはじめ、パッと見ただけでグッとくるものがありましたからね。あと描いているものを見て、即戦力として現場で働けそうだなと。

進行 採用時点で、そこまで見ていらっしゃるのですね。

室長 はい。基本的に入社した時に、どの部署の、どこのプロジェクトに、そして次はここへということまで考えて採用しますから。これは僕のやり方ですし、新人研修で配属が変わることもあるんですが。

進行 Shineさんは、なぜカプコンに応募したのですか?

Shine 私は学生時代に、一時期ゲーム会社でアルバイトをしていたのですが、そこはマルチタスク(同時に複数の仕事をする)を求める会社で、器用になんでもできるスタイルが良いとされていました。ゲームは好きだけど、この業界は私には向いていないのかな……と思ってしまい、就活を一度やめていたんです。そんな時、Takaraちゃんが「カプコンどうかな」って誘ってくれたんです。ゲームはもちろんですが、もともと大の動物好きなので、カプコンのキャラクターに活かせるんじゃないかなと。

進行 カプコンさんはキャラクターデザイナーに、どのような人材を求めているのですか?そもそも画力だけでゲーム業界に入ることはできるのでしょうか?

室長 カプコンで言いますと、ゲームが好きというのが第一条件ですね。絵を描きたいからというのではなくて、ゲームが好きでなおかつ絵を描くのが好き、という点を見ています。キャラクターデザイナーとしてならば、ゲームに出てくるキャラクターを創りたいというのが大前提です。
いくら画力が高くても、「絵が好き」だけではゲーム業界に入るのは難しいという室長。
Shine 実際、絵だけで勝負しようとする方も多いですけれど、私たちが採用されたのも、本当にゲームが好きという点が大きかったと思います。好きなものに対するこだわりがかなり強いので、それを見ていてくださったのではないかと。また、そうしたこだわりが画力にもつながっていますし、しがみつけるものがあるからこそ登り続けることができるんじゃないかと思います。

室長 すごく良いこと言うね(笑)。それに加えて、自分のやりたいことがある人。カプコンで、こういうことがしたいという想いがないと意味がないですね。

画力だけではない!ゲーム会社が求める力とは?

進行 具体的に、お二人のやりたいこと、好きなことはなんでしょうか?

Shine 私は自他共に認める動物好きです。だから、モンスターやエネミーに対するこだわりは人一倍強いですね。これを仕事にするために、学生時代から突き進んでいました。
動物好きを公言するだけあって、Shineさんのポートフォリオにはたくさんの動物が登場する。
Takara 先ほども言った通り、高校生の頃にあるゲームに感銘を受けて、そこからモンスターやエネミーに興味をもち、仕事にしたいなと思いました。

進行 早くから目的をもって行動されていたんですね。お二人は、なぜ京都精華大学を選んだのですか?

Takara 京都精華大学のカートゥーンコースでは、動物園でデッサンやクロッキーをする授業があると聞いていて、ここで生物を描く基礎を養おうと思い進学を決めました。授業課題のかたわらで、ゲームに合う絵も描いていましたね。

進行 カートゥーンコースの名物授業ですね。夏休みの間に動物園に通って500枚以上、なかには1000枚以上のクロッキーを仕上げる人もいますよね。

Shine 私も通っていたアトリエの先輩が精華出身だったので、その授業のことを聞いていました。入学を決めたのも好きな動物がたくさん描けると思ったからなんです(笑)。
カートゥーンコースの名物授業、動物園でのクロッキー。ちなみに、京都市動物園は特別待遇で無料入場できる。
進行 かなり過酷な課題だとは思いますが、そうした経験は現在の仕事に活かされていますか?

Shine 私は動物が好きだった分、苦しい思いをしたとかはなかったですね。自由に描かせてもらえたからこそ、自分の中でなにに気付くか、どういう点に注意して描くのか。対象物ごとに目指す描き方というものを突き詰めることができたと思います。

Takara 私はモンスター一辺倒だったので、当時、動物に関心がなくて……。でも、それがちゃんと絵に出ちゃうんですね。そこで、まず対象物となる動物を好きになるところからはじめて、根本的な部分から自分を塗り替えるようにしていました。

Shine いま振り返るとですが、「対象物をしっかりと見つめる」ということを考えさせてくれる授業だったんじゃないかなと思いますね。

室長 学生の場合、単に好きだから描くという方が多いですが、しっかりと対象物を観察できるかによって差は歴然です。二人のポートフォリオからも、それはしっかり伝わってきましたね。

進行 なるほど。観察力以外にキャラクターデザイナーに求められる力はありますか?

室長 会社のデザイナーは目的があって描きます。その絵を通じて、ユーザーが行動を起こしたくなるような絵でないと、ゲームには向いていないんです。なので、絵で伝える力が大切。これはキャラクターデザインだけでなく、コンセプトアートも同じです。

Shine 大学時代の授業では、伝える力をやしなう機会が多かったと思います。とくにカートゥーンコースは、学びの本質が「風刺画」です。たった一枚の絵でユーモアやメッセージを表現して、万人に「なるほどなぁ」と思ってもらえる絵を描く必要があります。「こうすればいいんだよ」っていう技術やアイデアが授業に組み込まれていましたね。今でこそ、そのように思いますが、当時は風刺画なんて……と思っていました(笑)。

Takara 私も同じように思っていました(笑)。でも、当時は、「伝えること」の重要性に気づけていなかったからだと思うんですね。イラストやデザインの根本的な違いを理解していなかったのだと思います。
カートゥーンの本質である「風刺画」を通じて、「伝えるための絵」を学んだという。
Shine 風刺画にはデザインに通じるものがたくさんあります。絵を描いている方ならわかる感覚だと思うのですが、目に見えているものをそのまま描いたとしても伝わらないことがあると思うんです。一方で、風刺画って現実をねじまげて描いているのに、伝わりやすくなる。「絵という嘘」が、現実以上のリアルを生むことがあるんです。大学で教わったことが、いまの仕事の「できること」を広げてくれていると思いますね。

室長 会社に入ると「やりたいこと」と「できること」は違いますからね。厳しい言い方になりますが、自分が描く絵でなにを伝えたいのか、それを考えて実行できる人じゃないとゲーム業界では通用しないでしょう。

これからゲームクリエイターを目指す高校生へ

進行 カプコンさんでは、京都精華大学の出身者が数多く働いていると聞きましたが、なにか共通することはありますか?

室長 二人のように現場で即戦力となる高いスキルをもっていますね。あと、京都精華大学出身者は、こだわりが強い人が多いです(笑)。そういう人ばかりを採用しているというのもあるかもしれませんが、頑固な人ばっかりですね(笑)。

進行 「頑固者」と言われていますが、反論はありますか?

Takara いえ(笑)。自分が好きなものを突き通して、仕事をしていきたいと思っていますから。友人で絶賛就職活動中の子がいるのですが、相談を受けた時には「自分の好きなことを探してね」と伝えています。第三者に言われたことをやり続けていると、自分が本当にしたいことってなんだったのか、見失ってしまうと思うんです。

Shine クリエイターは好きなことをしているからこそ、そのぶん苦労する時もあります。だから、自分が素直にやりたいと思えることをしないと続かないと思います。頑固なんですが、自分のやりたいことに素直なんだと思います。その素直さが目標に対する大きな力にも変わると思います。

室長 ねっ、頑固でしょう(笑)。
京都精華大学出身者の共通点は「頑固者」という室長の言葉に、思わず笑いが生まれる。
進行 そんなお二人の今後の目標は?

Shine リーダーシップを発揮できるスペシャリストになりたいと思っています。いまの仕事はもちろん、他にしたいことができれば、それも中途半端にはせずに突き詰めていきたいですね。

Takara 自分の個性や能力を最大限に活かしていきたいと思っています。技術をさらに高め、「この人しかこの仕事できないよね」と言われる人になりたいですね。

室長 実は、二人にはやりたい仕事を入社1年目から与えているんです。本当なら5年目、10年目の人がやっている仕事。もちろん、苦戦しながらですけどね。自分の軸足となる得意な分野を伸ばしつつ、そして幅を広げながら、人の上に立つようになってほしいと願っています。
堅実なチャレンジャーとしてヒット作を生み続けてきたカプコン。次のタイトルが楽しみだ。
進行 6月18日のオープンキャンパスでは、お二人に大学にお越しいただき、ライブペインティングで絵を描く過程を見せてもらいます。楽しみにしている高校生や在校生の方に、一言メッセージをお願いします。

Shine 高校時代は普通科でした。中学生の時に美術系の高校に進学するか問われた時に、あえて自分にブレーキをかけて普通科に進学したんです。そこから美大に行くと話したとき大反対されましたが、それでも今、私は好きな絵を描くことを仕事にしています。まわりの人になにを言われようとも、好きなことを諦めずに大切にしてきたからだと思います。ライブペインティングを通して、「絵を描くことが好き」という想いが伝わる場になればと思っています。

Takara 少しシビアな話をすると、絵を仕事にする人は飽和状態になってきています。誰かが自分の代わりになるからと諦めるのではなくて、自分だけの絵を見つけることが大事だと思います。私たち二人は絵の個性もまったく違うので、ライブペインティングを見てくださる人が、自分らしさを探すきっかけになればと願っています。

室長 描くことを仕事にしているプロが、純粋に絵を描くことを楽しんでいる姿を見てもらう貴重な機会だと思います。人が描いているのを見るのは楽しいし、描くことってなんて楽しいんだということが再認識できる場になるよう、お二人がんばってくださいね(笑)。

進行 今日はどうもありがとうございました。これからもお二人の活躍を期待しています。

ゲーム系企業への就職実績

京都精華大学では、カートゥーンコース以外のコースからも、ゲーム系企業への就職実績が多数あります。

過去3年以内の主な就職実績

(株)カプコン
任天堂(株)
(株)コナミデジタルエンタテインメント
(株)レベルファイブ
グリー(株)
(株)コロプラ
(株)ミクシィ
(株)インテリジェントシステムズ
(株)マーベラス
6月18日(日)のオープンキャンパスでは、インタビューに登場した卒業生のお二人を招き、ライブペインティングを開催しました。

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