2019年2月16日(土)に開催された第12回「京都・文化ベンチャーコンペティション」の最終審査において、「京都精華大学伝統産業イノベーションセンター特別ゼミ工藝部(代表:デザイン学部プロダクトデザインコース2年 森 由夏さん)」が取り組んできた「手仕事の循環をつくるプロジェクト」が、アイデア部門で京都府知事賞 最優秀賞を受賞しました。
本コンペティションは京都府が主催する、文化をテーマとした新たなマーケットの醸成をめざすもので、2007年から開催されています。今回は、アイデア部門に応募があった88件のプロジェクトのなかから、「手仕事の循環をつくるプロジェクト」が最優秀賞に選ばれました。
「京都精華大学 伝統産業イノベーションセンター特別ゼミ 工藝部(以下工藝部)」では、学外の伝統産業の職人さんの工房を訪ねて、手仕事の「歴史」と「今」と「未来」を考えることを軸に活動しています。工房訪問を重ねるなかで浮かび上がってきた課題が、廃材の処理と、道具や材料の枯渇問題でした。
たとえば木工の工房では毎日大量の鉋(かんな)くずが生まれますが、それらは「産業廃棄物」として有償で廃棄する必要があります。処分コストがかさむことによって、職人さんの仕事に制限がある構造になっているのが現状です。
一方で道具や材料は、事業者の廃業や産地の消滅によって枯渇しているという問題があります。
しかし、工芸で用いられる素材には上質なものが多く、廃棄品とはいえ、工夫次第では商品価値を持つ可能性があります。廃棄品に新たな価値を与えて販売し、その売り上げを、今、危機に瀕している道具・材料の支援に充てることはできないか。それによって伝統工芸に新たな循環を作り出したいという思いから、工藝部では代表者の森さんを含めて8名のメンバーが、2017年度から「手仕事の循環をつくるプロジェクト」をはじめました。
各工房で職人さんに企画を説明し、意図に賛同いただいた10社程に、端切れや鉋くずなど工房で不要となった工芸品の一部を提供してもらいました。2017年の京都精華大学大学祭(木野祭)や、上賀茂神社で開催される「上賀茂手づくり市」に出店し、提供いただいた端切れをブックカバーなどに加工して販売しました。2017年度の売上は、経費を除いた全額を国産漆の復興に取り組むNPO法人「丹波漆」に寄付しています。
2018年度も大学祭で出店。ブックカバーやペンケースなど、工芸品の一部を用いたプロダクトを学生のデザインで考案し、多くの人に興味を持ってもらえるよう取り組んでいます。
活動は2019年で3年目を迎えます。本審査にあたって、メンバー全員でプレゼン準備をしたことで、これまでの活動を振り返り、課題点や今後の活動方針を改めて見直す機会となったと、森さんはお話しされていました。
京都精華大学伝統産業イノベーションセンター特別ゼミ工藝部のみなさん、おめでとうございました。今後の活動が、更に、伝統産業の価値と現状を多くの人に届けられるよう発展していくことを期待しています。
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■伝統産業イノベーションセンター
これまで京都精華大学が培ってきた伝統産業の知見を集約し、より活発な教育・研究活動に還元するために2017年に設立しました。
伝統工芸講座や社会連携プロジェクト、5学部の知見を生かした伝統産業研究に取り組んでいます。