2019年9月28日(土)より、瀬戸内国際芸術祭2019(秋会期)のスタートにあわせて、本学有志が展開する「高見島プロジェクト」が開始しました。同プロジェクトは2013年以降、芸術祭に合わせて毎回実施しています。今回も芸術学部教員 内田晴之(美術科 立体造形コース1974年度卒業)が中心となり、幅広い年代の卒業生、在学生が作品を出展しました。
屋内の展示会場となっているのは島内の空き家です。島の方々の協力を得ながら、屋根瓦を葺き替えたり、腐った柱を建て直したりするなど、まず建物としての機能を取り戻すところから開始。1年以上かけて修復し、作家ごとにまったく異なる作品が完成しました。
プロジェクト代表である内田は、かつて栽培が栄えた除虫菊を用いて島の再生を思わせるインスタレーションを展開。2013年からの出展作品をさらに変化させました。同展示会場の1階部分は、本学で教員もつとめる小枝繁昭さん(美術科 絵画コース1972年度卒業)の作品が彩っています。
中島伽耶子さん(芸術学部 洋画コース2012年度卒業)は家屋に無数の穴を開け、自然光を室内に取り込み照らすことで、家のなかに残された気配を隅々まで見ることに焦点を当てました。中島さんが手がけた2作品は、2013年・2016年から継続して展示されています。
藤野裕美子さん(芸術研究科 博士前期課程2012年度修了)は90代の島民の方と、廃村地区にある元住居に訪問。当時の思い出が蘇るとともに元気になられていく様子に感動し、語られた鮮やかな記憶をもとに絵を描きました。
今回初めて立体作品に取り組んだ山田 愛さん(デザイン学部グラフィックデザインコース2013年度卒業)は、海岸から石を運び込み外観からは想像できない異空間を創作。大石いずみさん(芸術学部 洋画コース4年生)は思いきって、室内を現代的なギャラリーに変化させました。部屋じゅうに細いステンレス線をめぐらせた村田のぞみさん(芸術研究科 博士後期課程1年生)の作品については、同作を目当てに鑑賞しに来られた方も。そのほか、屋外作品を含む13作品(うち11作は新作)が島内のあちこちに展示されています。
現在、高見島の人口は30名ほど。いまは芸術祭でにぎわう島も、ふだんは非常に静かだそうです。作家たちは、作品制作のためのリサーチ過程で、人口の減少とともに埋もれ、消えてゆこうとする数多くの島の記憶に出会いました。そこから着想を得て完成した作品には、作家と島民の方々との共同作業を経て、またあたらしい記憶が紡がれています。
「高見島プロジェクト」の会期は2019年11月4日まで。
ゆったり流れる島の時間とあわせて、ぜひ体験しにお越しください。
出展作家 敬称略・50音順
内田晴之、大石いずみ、鎌田祥平/並木文音、小枝繁昭、中島伽耶子、藤野裕美子、PARANOID ANDERSONS(溝垣 高志、中野 寛之)、村田のぞみ、山田愛、ロサナ・リオス