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5月23日(木)アセンブリーアワー講演会「近代に芸術家は何を考えてきたか?『抽象の力』の余白(講師:岡崎乾二郎氏)」レポート

2019年5月23日(木)に講師 岡崎乾二郎氏を迎え、アセンブリーアワー講演会「近代に芸術家は何を考えてきたか?『抽象の力』の余白」が開催されました。
 
造形作家として絵画、彫刻、映像、建築など多岐にわたる創作活動と並行し、美術批評の分野にも大きな影響を与え続けてきた岡崎氏。昨年末に刊行され評判を呼んでいる大著『抽象の力-近代芸術の解析』に基づき当日は、同書では取り上げていない作家や作品なども紹介しながら講義を行いました。
本講義のなかで最も注目されたのは、19世紀~20世紀にかけて活躍したフランスの画家 ピエール・ボナール(1867-1947)です。スクリーンに作品を映し、その一部を隠したり、ズームインしながら「一枚の絵の中に複数の視点、異なる時間が表現されている」ことが具体的に説明されました。
 
また絵画作品にとどまらず、小説家 夏目漱石(1867-1916)が提唱した文学の構造分析「f + F」論の紹介や、マルセル・プルースト(1871-1922)の「失われた時を求めて」のテキストを参照しながら、人々が日々感受され続ける無数の印象・感情をどのように統合しながら表現してきたのか、分野をこえて紹介されました。
最後に紹介したのは『抽象の力』でも大きく取り上げていたヒルマ・アフ・クリント(1862-1944)でした。同書では、クリントについて現在美術史上で抽象絵画の始まりとされる1910年代以前の1906年にはすでに抽象表現を行った、世界最初の抽象作家として紹介されています。クリントの抽象作品群は、彼女の死後20年は公開しないというクリント自身の遺言によって、1960年代頃まで、封印されていました。当時は数少ない女性作家として活躍してきたクリントの葛藤をこのエピソードからも伺い知ることができます。
「抽象の力」に衝撃を受け、あるいは希望を感じ、それが何かを知りたい人が、美術をこえた分野にまで数多くいることが感じられました。
岡崎乾二郎さん、貴重なお話を本当にありがとうございました!

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