マンガ・アニメから伝統文化まで。日本文化を世界に発信

京都は世界でも有数の国際観光都市。伝統と革新が同居し、多様な国や地域から人が集まる京都の特性を生かし、日本の文化について理解を深めます。世界的なマンガ研究施設である「京都国際マンガミュージアム」を所有することも強みです。また、海外に向けて広く発信する力をつけるために、英語力に加えて日本語力の向上も重視しています。世界とつながるフィールドワークのプログラムでは、日本と海外、どちらを拠点に選ぶことも可能。好きなことを社会に貢献する力に転化し、文化で日本と世界をつなぎます。国家資格である登録日本語教員の免許を取得することもできます。

科目PICK UP

  • 伝統文化論

    伝統文化がつくられ継承される仕組みとその背景について考察する。自然と人間との関わりから理解することを出発点としつつ、社会的な機能や、近代以降の変容について知識を得る。現代における伝統文化の意義を確認する。

  • サブカルチャー論

    マンガ、アニメ、2.5次元舞台、ライトノベル、ドラマや映画、ポピュラー音楽、アイドルといった、互いに絡み合う現代日本の大衆文化に焦点を当てて学ぶ。文化的コンテンツを扱う理論との往還を通して、その様態を考察する。

4年間のながれ

  1. 1年次

    FIRST

    ことばを探求し「読む」「書く」「話す」を少人数クラスで向上

    1年次は専攻に所属せず、人文学や各専攻の基礎を学びます。分野の特徴や研究手法の違いなどを理解し、興味のある研究テーマを探究します。また、物事を掘り下げる力や自分の考えを論理的にまとめ発表する力を身につけ、ことばを通して自己と他者への理解を深めます。

  2. 2年次

    SECOND

    希望の専攻に所属。学外での本格的なフィールドワークへ

    国際文化・国際日本学のいずれかの専攻に所属。後期からは6カ月間、キャンパスを離れて現地調査を行う「フィールド・プログラム」に参加します。国内外のさまざまな地域を訪れて調査することで、実践に即した思考力を養い、視野を広げます。

  3. 3年次

    THIRD

    得た知見をまとめ、 発表することで理解を深める

    現地調査によって収集したデータや資料を整理し、教員や仲間たちに報告。指摘や議論を通じてさらに視野を広げ、研究テーマへの理解を深めていきます。同時に、所属専攻の専門科目を通して、より深い知識と知見を身につけます。

  4. 4年次

    FOURTH

    卒業研究に取り組み、 自分の考えをかたちにする

    自分の研究してきたテーマを他者に伝わるように論理的に構成し、卒業論文として発表します。論文執筆に取りかかる際には、担当教員が親身になって指導にあたり、構想を練るところから文章の校正まで、一対一でアドバイスを行います。

4年間で身につく能力

  • 日本や海外の文化の魅力を発信する力
  • 多様な文化を比較し、多様性を理解する力
  • 体験学習による調査分析力と問題発見能力

フィールドワークプログラム

日本文化を見つめ直し、世界に通ずる魅力を再発見する

2年次の6カ月間は全員がキャンパスを離れて現地調査へ。アニメやマンガなどの大衆文化や伝統文化など、多様な日本文化をテーマに、日本各地で調査を行い、その魅力と世界が注目するポイントを探ります。日本文化を国内外へ発信する方法を提案するほかにも、文化を社会課題の視点で調査することも可能です。

学びのポイント
調査期間は半年~最長1年
 京都をはじめ国内は4カ所、海外は8カ所の国や地域から拠点を選んで研究できる
 実践的な調査力が身につく

調査の事例

  • 京都のポピュラー・カルチャーを考える

    本学が管理・運営を担う京都国際マンガミュージアムを拠点に、京都におけるポピュラー・カルチャーのあり方を調査・研究します。

  • 京都で日本映画の歴史を考察する

    かつて「日本のハリウッド」とよばれた京都は、日本映画に関する歴史の宝庫です。撮影所・映画館・大道具など、日本映画の歴史を調査・研究します。

  • 京都で日本の伝統文化を調査・研究

    京都で生まれ、現在も形を変えながら継承されている伝統文化・産業について、工房をはじめとする現場に赴いて調査しながら現状を探ります。

卒業論文テーマ例

  • 『呪術廻戦』における呪術のルーツ  —「呪いの王」両面宿儺との関係性

    本論は週間少年ジャンプで連載中の『呪術廻戦』における呪術等のモチーフを調べたものである。その際に作中で「呪いの王」と呼ばれている両面宿儺について、他の媒体で使われている両面宿儺伝説との比較をしながら作品ごとの傾向、特徴についても取り上げる。具体的には『日本書紀』、『今昔物語』、同じマンガ作品である『結界師』、『地獄先生ぬ~べ~』などである。こういった文献から主に呪術に関してのモチーフを日本、世界の呪術を比較しながら探った。時代では現代の呪術、過去の呪術と例を挙げて説明した。過去の呪術では作中のキャラクターが使っている呪術の特徴や作中の呪術師の家系などの観点から、それに近いもの、またはその特徴を含んでいるものとの比較をした。これらの内容から最終的に『呪術廻戦』という作品がどういった世界観なのか、またどんな作品、ものの特徴を含んでいるのかを解き明かすことを目標とした。

  • 沖縄・壺屋焼近現代史 —技術と作風の転換点

    本研究では沖縄を代表する伝統的工芸品である「壺屋焼」を取り上げる。「壺屋焼」は沖縄らしさを感じるおおらかで色彩豊かな作風であり、多くの人にとって魅力的な陶器であり、現代でも広く浸透している。琉球王国時代以降の様々な社会情勢の変化への対応に加え、認知の低さや衰退の危機を乗り越えてきた。本研究では「壺屋焼」がどのように逆境を乗り越え、そのなかで技術や作風がどの変化していったかを論じる。本研究では2 度に渡って沖縄に滞在し、現代陶工や陶器専門店等への聞き取り調査を行った。歴史的背景と現地の声をもとに現代の「壺屋焼」の状況を考察した。
    結論では特に重要な転換点として琉球王国の消滅と民藝運動の2 点を挙げている。現代の「壺屋焼」を代表する技法や作風がこれらの出来事を発端に大きく変化し、「産業的な壺屋焼」と「民藝的な壺屋焼」が生まれていったことを結論付けた。

その他の論文テーマ例

 デジタルゲームとジェンダーの多様性
 プリントシール機( プリクラ) を介した写真コミュニケーションの変遷
 小人と人間の境界線 —映画『借りぐらしのアリエッティ』における他種族の関係性
 ゲーム業界の歴史と発展 —未来を変える芸術
 1980 年以降のJ-POP における追悼歌の歌詞分析
 DTM 楽曲における「顔を出さないミュージシャン」の世界観構築について
 漆原友紀『蟲師』の妖怪像 —1990 年代以降、キャラクター化が加速する妖怪の姿
 コンセプトカフェの歴史的系譜 —メイドカフェから見て
 京焼とオブジェ —走泥社を中心に
 清水寺門前町における店舗の変遷 —産寧坂地区の事例
 変化する京陶人形と現在
 京都の祭と神の形 —賀茂社と祇園社
 奄美大島の伝統行事・伝統料理の現状 —奄美市名瀬知名瀬を事例として
 「モダン着物」の流行にみる現代日本の服飾文化
 なぜ人々は和菓子に願いを込めたのか
 京都の伝統的工芸品の今と昔の考察
 子授かりの熊野信仰と三足烏 —実家の文書から読み解く町民が守り続けてきた縁起

卒業後の進路

経験を武器にグローバル社会で活躍する
グローバル化が進む現代では、商社や貿易、観光業から、教育、NGO・NPOなどまで、グローバルな視点での問題発見・解決能力や海外と日本をつなぐ人が求められています。さらに、企業では利益の追求だけではなく社会貢献が新たなキーワードとなっており、ソーシャルビジネスやソーシャルデザインの分野での活躍も期待できます。

 めざせる職業
登録日本語教員、ツアープランナー、 キュレーター、 公務員、学芸員、 図書館司書、編集者、流通、企画職、営業(総合職) など
 
 主な就職先
日本語学校、旅行代理店、 観光・サービス業、 NPO・NGO、 広告制作業、製造業、 流通小売業 など

 充実した就職サポート
京都精華大学では、着実にステップアップできるよう学年別のサポートや、幅広い進路に対応した充実のキャリア支援体制を築いています。
履歴書対策や面接対策など、個別指導も充実しています。

取得できる資格

 登録日本語教員※
 図書館司書
 博物館学芸員
※2025年度開設にて申請中。ただし、文部科学省における審査の結果、予定した養成課程および実践研修が開設できない可能性があります。

VOICE

  • 板谷 愛月さん在学生

    現代人が求めるものをオタク文化から探る。

    マンガや映画が大好きで、日本のサブカルチャーを研究してみたいと考えていました。また同時に、外国語にも興味があり、いろいろな言語を学んでみたいという気持ちもありました。この専攻は、そんな私にぴったりの専攻。各国の留学生が集まるキャンパスで、日本の文化を幅広く学べる環境は理想的です。現在は、マンガを中心にしたオタク文化の研究に取り組んでいます。出発点は「マンガが好き」というシンプルな思いでしたが、作品の内容はもちろん、そこから広がるビジネスや社会現象を追っていくと、現代人が何を求めているかが見えてくると考えています。この内容をもっと練り上げて、卒業論文にまとめていくつもりです。
    国際文化学部の魅力は、長期フィールドワークに挑戦できることです。資料の収集や文献の閲読など、簡単ではない作業もありますが、好きなことを研究するのはやっぱり楽しい。何より、行動力・思考力・伝える力などが伸びていく実感が得られます。調査や研究の過程で迷うことがあっても、先生たちが一緒に解決方法を考えてくれるので心配はいりません。何かに夢中になりたい人に、ぜひ体験してほしいプログラムです。
  • 新井 颯さん在学生

    一つのイメージでは語りきれない 日本文化の幅広さ。

    中高生の頃から神道や伝統工芸に興味があり、将来はそれらに関係した仕事に就きたいと考えてこの専攻を選びました。
    専攻全体の講義では、伝統産業や芸能、妖怪やアイヌ民族の歴史、それにサブカルチャーまで、幅広い分野の歴史と知識を学びます。日本文化と言っても、よい意味で抽象的で、一つのジャンルやイメージだけで語れない多様性があるんです。
    特にゼミでの学びが刺激的です。僕は神道や伝統工芸について調べ発表しますが、他のゼミ生は「祭り」だったり「観光産業」だったり、テーマにそれぞれ個性が表れ、知らない分野の知識を得られる楽しさがあります。
    こうした学びを通して、実技面では御朱印に毛筆で書き入れる文字を書けるようになりたい、伝統工芸品を自分でも作ってみたいという目標ができました。調査研究としては、近年停滞している日本の伝統工芸をどうすれば活性化できるか考えてみたいと思っています。
    日本文化は一般に思われている以上に幅広い世界です。迷っている人は多くの分野や表現に触れたうえで、自由に研究対象を選び、深めていけばよいと思います。
  • ユー・スギョン教員

    マンガ文化を通して 世界と出会い、つながる。

    日本のマンガ文化、特に視覚表現の研究が私の専門ですが、外国のマンガ事情にも常にアンテナを張っています。外国における日本マンガの受容や外国出身のマンガ家による日本スタイルの作品、彼らの日本での活躍などに興味があります。ここ数年はフランス語圏アフリカのマンガも調査してきました。韓国出身の私は、来日するまでは外から、現在は内から日本のマンガ文化を見つめています。外と内では視点や楽しみ方に多くの違いがあることに気づいたのが研究の原点でした。マンガは身近だからこそ、時代と社会、そこで生きる人びとの考えを強く反映します。マンガ研究とは、現代の社会と文化を見つめることでもあるんです。国際日本学専攻では、伝統芸術からサブカルチャーまで幅広い視点で日本の文化への理解を深めます。ある表現やジャンルが形成された理由を社会的環境と歴史的背景、メディアの形態などから探り、他の国や地域とも比較することで「世界の中の日本」を捉える新たな視点が得られます。日本文化に興味がある人、日本文化を通して世界とつながりたい人におすすめです。これまで信じ込んできた「当たり前」や「常識」を見直し、新たな日本と世界に出会ってみませんか?