人文学部 学部共通プログラム
長期フィールドワーク
FIELDWORK PROGRAM

HUMANITIES

長期フィールドワークとは

人文学部の最も大きな特徴は、2年次に半年間、大学以外の場所で調査・研究する「長期フィールドワーク」のプログラムです。
日本・海外の12の国や地域から興味のある土地を選んで、自分の決めたテーマを追究することができます。
調査テーマを決め、現地で調べ、集めたデータから分析して自分の意見を発表する経験は、どんな将来に進んでも必ず生きる力となります。

長期フィールドワークのポイント

 調査期間は半年間(海外は最長1年まで延長可)
京都をはじめ国内や世界各地で実地調査できる
 実践的な調査力が身につく

長期フィールドワークのながれ

1年次後期 エリア・テーマを選択する
2年次前期 調査計画書を作成
2年次後期 現地を訪れて調査を行う(半年~最大1年間)
2年次後期~3年次前期 調査結果を検証し、報告書・パネルにまとめて発表する

調査エリア

興味のある土地を選んで調査を行います。
コースにかぎらず、日本・海外あわせて12の拠点から選択することが可能です。

 日本国内:京都、北海道、沖縄、関東
 海外:アメリカ、カナダ、ニュージーランド、フィリピン、韓国、台湾、フランス、スペイン
※海外の場合は、いずれの国でも 12~16週間、語学学習を行います。

長期フィールドワーク テーマ例

フィールドワークには「国内研究」と「海外研究」の2種類があります。
どのコースを選んでも好きなプログラムを選択することが可能です。
※以下は一例です。自信の興味関心に応じて調査エリアとテーマを設定します。

国内研究

京都

  • 京都 × 物語

    京都の神社仏閣は、平安時代から現代にいたるまで様々な物語の舞台に選ばれてきました。作品の時代背景や作者について調査しながら京都を歩くことで、物語の本質に迫ります。

  • 京都 × 武将

    源頼朝の石清水八幡宮の参詣をはじめ、織田氏、豊臣氏、徳川氏など、石清水八幡宮に残る書状を調査し、神社と武将の関係性について考察します。

  • 京都 × マンガ・アニメ

    京都を舞台にしたアニメーション映画の舞台と設定を調査し、他府県から見た「京都」のイメージと実態を検証します。

  • 京都 × 伝統文化

    平安時代の文学に登場する香「薫物」は、現在でも生産・販売されています。お香会社を訪れ、現代の生活にどのように取り入れられているか調査します。

  • 京都 × 企業

    京都の中小・ベンチャー企業を対象として、食品ロスや脱プラスチックといった社会問題への取り組みを調査し、持続可能な社会の実現が目指される現代における企業の役割を調査します。

  • 京都 × 異文化

    かつて多くの在日コリアンが居住した東九条。地域の産業や歴史的変容とともに、在日コリアンの生活と文化を調査することで、異なる文化をもつ人びとが存在した地域社会の実像を分析します。

  • 京都 × アート

    美術館以外の場所で作品展示を行う国際芸術祭を調査し、京都の文化的資産の新たな活用方法と、アートイベントによるつながりの機会創出を考えます。

  • 京都 × 祭

    日本三大祭りにも数えられる「祇園祭」で、それぞれの山鉾町がどのように伝統の風習や技術を継承しているのか、町ごとの特徴や違いを調査します。

  • 京都 × 地域社会

    都会というイメージのある京都市ですが、高齢化・過疎化が進むエリアもあります。京北宇津地域を訪れ、地域活性化の課題と対策を考えます。

  • 京都 × 近現代

    大学近郊の岩倉地域で当時先進的な治療方法に取り組んだ精神医療について、史料購読や関係者への聞き取り調査を行い医療から地域の歴史を追究します。

  • 京都 × 観光

    京都で問題化する「オーバーツーリズム」について、公共交通機関とタクシー利用のそれぞれで実態調査し、持続可能な観光地産業について考えます。

  • 京都 × 動物園

    京都市動物園の運営に実践的に携わりながら、動物と人間の関係のあり方を調査し、動物にとっての快適な暮らしと、人びとが動物から癒しを得ることの両立について考察します。

北海道・沖縄・関東

  • 北海道 × 先住民族の文化

    北海道の提携大学に留学。先住民族であるアイヌ民族の衣類や工芸、食文化など、文化や暮らしについて、現地で調査・研究します。

  • 沖縄 × 戦争

    沖縄の提携大学に留学。太平洋戦争における旧日本軍第 32 軍(沖縄守備群)の陣地や飛行場跡地などの戦跡を辿り、地上戦が町に残した影響について考えます。

  • 関東 × 近代文学

    東京の提携大学に留学。東京近郊に残る文豪のゆかりの地や文学館を訪ねて、明治以降の日本文学がどのように発展したかを考察します。

海外研究

  • アメリカ × ジェンダー

    アメリカの大学や公的機関等において、ジェンダー平等がどのように実践されているかを調査し、日本社会と比較検証します。

  • アメリカ × 政治

    若者を対象とした選挙活動の方法を調べ、アメリカの大学生と日本の大学生の政治意識にどのような違いがあるのか、インタビュー調査を行います。

  • カナダ × 福祉

    バンクーバーの電車や駅構内、バス、学校等の公共空間におけるバリアフリー環境を調査。誰もが生活しやすい空間のつくり方を考えます。

  • カナダ × 言語

    多文化主義国家であるカナダでは、移民として生きる人々が母語や共通語をどのように使用しているのか、現地調査を行います。

  • ニュージーランド × 共生

    ニュージーランドの先住民族マオリのタトゥー文化を切り口に、民族特有のコミュニティや社会形成のあり方を調査します。

  • ニュージーランド × 教育

    どのような絵本が出版されているのか、また購読されているかを収集・調査し、幼児・児童を対象としたニュージーランド特有の文化教育を分析します。

  • フィリピン × 児童福祉

    フィリピンの孤児院で、教育支援や食事提供のボランティアを行いながら、家庭環境や国の経済成長について調査・研究します。

  • スペイン × 祭

    スペイン・ウエスカの伝統的な祭礼、聖ロレンソ祭で披露される伝統舞踊を調査。文化の継承に地域の交流がどのように貢献しているのか考えます。

  • スペイン × 建築

    キリスト教とイスラム教が共存してきたスペインの教会を調査し、二宗教間の文化がどのように融合してていたのかを建築から考察します。

  • フランス × スポーツ

    フランスで最も人気のあるスポーツ・サッカーを切り口に、1930年以降のスポーツ政策によってどのように環境整備が行われきたのか現地で調査します。

  • フランス × 日本文化

    フランスで注目される日本のマンガ・アニメーションが、現地でどのように受け入れられているのか、ファンへの聞き取り調査から分析します。

  • 韓国 × 音楽

    今や世界中に流通している K-POP について、韓国の音楽番組や SNS の配信から、現地の若者にどのように浸透しているのかを調査します。

  • 韓国 × ペット産業

    韓国社会とペット産業について販売店舗や「動物カフェ」を訪問し、日本のペット産業との違いや、ペットとの生活から見える文化の違いを調査します。

  • 台湾 × 歴史

    台湾原住民のルカイ族について調査します。日本統治時代を経験した古老から当時の状況や日本について聞き取り調査を行います。

  • 台湾 × 食文化

    外食産業が発展する台湾において、各家庭の食生活のあり方が、日本とどのように違うのか調査し、食事から見える家族の交流について考えます。

学生の声

  • 眞田 楓さん在学生

    障害をもつ人に着付けを。 京都の伝統産業の現場で。

    長期フィールドワークの題材には、着物を取り上げようと考えました。せっかく京都の大学に通っているので、京都の伝統産業に関わる調査がしたかったからです。最終的に決めたテーマは「車いす利用者の着物需要に対するレンタル店の取り組みと課題」。成人式で着物の着付けをしていただいたとき、「車いすの人にはどうやって着付けをするのだろう」と思ったことから、このテーマが生まれました。
    調査期間中は、関連する文献を読んだうえで、車いす利用者向けの着物レンタルサービスを行う企業や、車いす利用者向けの着物リメイクサービスを行う企業を訪問し、取材をさせていただきました。印象的だったのは、着物のリメイクは、障害の程度や個人の体格差に合わせるため、ほとんど手作業で行っていると聞いたことです。着物を着たいと思う人の気持ちに寄り添い、きめ細かいサービスを届けようとする方々の真摯な姿勢は、文献からは読み取れないことでした。有意義な調査ができたと思います。長期フィールドワークを通して、自分で考える力、行動する力、問題が起こったときに臨機応変に対応する力などが身につきました。ここで得た知識や経験を、次は卒業論文の執筆に生かしたいです。
  • 井上 健太さん在学生

    スペインのコミュニティに飛び込んで、 生きた語学と文化を学んだ

    調査テーマに選んだのは、「スペイン・グラナダでのコミュニティ形成におけるバルの存在意義」です。スペインには「バル」と呼ばれる社交場があります。日本の居酒屋のような場所ですが、単なる飲食店ではなく、軍による独裁体制が築かれていた20世紀半ばには、自由な政治的活動が禁じられるなかで、人びとが集まり議論が行われていた歴史があります。
    その場所が現在はどのように機能しているのかを調べたいと考えました。現地に行ってみるとバルにも種類があり、対話の目的や同行者との関係性によって使い分けられていることがわかりました。サッカーやフラメンコなど、スペイン文化とのつながりにも気づけたことは新たな発見です。積極的に現地の人に聞き取りをしたことで、スペイン語や英語での会話力が身につきました。調査中に気づいたことや疑問点はすべてメモに残し、その後の日本での研究に役立てています。
    私が京都精華大学に進学した理由は、長期フィールドワークのプログラムに魅力を感じたからでした。海外に行ってみたい、さまざまな国の人と接し、語学力を身につけたい。そんな希望をかなえられたこの経験は、これからの人生をきっと支えてくれるものだと思います。

よくある質問

  • 調査エリアやテーマはどのように決めるのですか?
    学生一人ひとりが、自身の興味関心に応じて調査エリアとテーマを設定します。
    1年次の必修科目「地域学」で、充実した現地調査を実施できるように、フィールドワークの基礎的な知識を身につけます。そのうえで教員と個別に相談しながら、調査エリアやテーマ、スケジュールや調査方法などを決定していくので、一人で決めることが不安な人も安心できる環境です。
  • 費用はどのようなものが発生しますか?
    京都以外の調査エリアでは、提携先大学の寮に滞在します。提携大学の授業料はかかりません。
    調査地までの往復交通費や、滞在期間中の食費は発生します。交通費と滞在費は、調査地域の物価によって変動します。
  • 海外でフィールドワークを行う場合のサポート体制はどうなっていますか?
    海外経験豊富な教員が、準備段階から現地生活に至るまで、きめ細やかなアドバイスを行います。海外旅行保険のほか留学生危機管理サービス(OSSMA)に加入して、現地受け入れ先や現地協力者などとのネットワークによる体系的な安全対策を徹底しています。また、滞在中は、オンライン通話やメールを通じて定期的に連絡を取り合い、調査状況を確認します。
  • 収集した調査結果はどのように扱うのですか?
    フィールドワークで得られたデータや考察をまとめた報告書と、調査の成果を視覚的にまとめた報告パネルを作成します。作成した報告パネルは学内で展示を行い、成果発表を行います。
  • フィールドワークを通してどのような力が身につきますか?
    長期フィールドワークの経験は、調査能力や情報分析力、他者とのコミュニケーションする力、異文化理解など、多様な力を与えてくれます。研究の糧になるのはもちろん、就職活動での自己PRや将来の仕事にも必ず生きる力です。