歴史の現場・京都に根ざし、人間のありようをリアルに学ぶ

歴史を学ぶ絶好の場所である京都という土地柄を生かし、文献調査に加え、実際に史跡に足を運ぶ現地調査を積極的に行います。古代から近代まですべての時代の日本史を対象とし、そのなかから興味のある事柄を選び研究します。過去を研究することは、過去の人間に学ぶということ。歴史に名を残さなかった民衆にもスポットライトを当て、当時を生きた人間の姿、生き方を見出します。これらの研究は、単に過去を知るのではなく、自分自身の生き方や、今後の社会を考えるうえでの大きなヒントになるはずです。

めざせる職業
 学芸員、 学校教員、ツアープランナー、 公務員、図書館司書、編集者、企画職、営業(総合職) など

主な就職先
 旅行代理店、 観光・サービス業、 NPO・NGO、 広告制作業、製造業、 流通小売業 など
 
取得できる資格
高等学校教諭一種免許状(地理歴史)、中学校教諭一種免許状(社会)、図書館司書、博物館学芸員

科目PICK UP

  • 京都の歴史

    京都には平安神宮や京都三大祭(葵祭、祇園祭、時代祭)など、歴史的な遺産が数多く残っています。それぞれの歴史的背景を探るとともに、講義を受けるだけでなく、実際に現地を歩いて体感するフィールドワークを行います。

  • 古文書解読

    歴史を研究するうえで史料の解読を避けて通ることはできません。しかし、当時の文書を読むためには、くずし文字の表記ルールや、時代ごとの様式を理解することが必要です。この授業では、江戸時代の史料を実際に読み解きながら、意味や内容を正しく解釈できるようトレーニングを行います。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    「言葉の力」を伸ばし、 大学で学ぶための 基盤をつくる

    1年次は大学で学ぶための基礎を身につける期間です。人文学の学びに不可欠な「言葉」の力を身につけるために、少人数のクラスに分かれて、文章を読み、話し、書く力をやしないます。また、歴史や文学、社会、国際、日本文化の多様な切り口から物事を考える経験を積み、自由な視点を育てます。

  2. 2年次

    SECOND

    学外での本格的な フィールドワークへ

    並行して長期フィールドワークに向けて教員の指導のもと計画を立てます。後期からは半年間、キャンパスを離れて現地調査を行います。この経験で得られるのは、自ら考え、実践し、他者に伝える力。将来どのような道に進んでも生かせる、たしかな力と自信です。

  3. 3年次

    THIRD

    専門科目とゼミで知識を広げ思考を深める

    長期フィールドワークの調査報告をまとめると同時に、各コースの専門科目で深い知識と研究方法を身につけます。また、少人数のゼミに所属し、文献の読解やテーマに関する調査の発表やディスカッションに取り組みます。対話を通じて多様な意見に触れながら、思考を深めていきます。

  4. 4年次

    FOURTH

    4年間の学びを卒業論文として発表する

    4年間の学びの集大成となる、卒業論文を執筆します。書き上げた卒業論文は、2月に行う卒業制作・論文発表展で全員が展示します。学内外の人から客観的な意見をもらうことができる貴重な機会です。

4年間で身につく能力

  • 歴史資料を読み解き、事実を明らかにする力
  • 物事を異なった側面からとらえ直す力
  • 過去を知ることで、現在・未来のあり方を考える力

専門科目の特徴

古代から近代まで 専門家がそろい、 民衆の視点から読み解く

日本の古代・中世・近世・近代の時代別の研究者が揃い、それぞれの時代において人びとがどのように生きていたのか、史料をもとに深く掘り下げます。地域史・社会史・民衆史という三本の軸を中心に据えて、日本の歴史を総体として理解する眼をやしないます。

<必修科目>
歴史学概論、日本古代史特講、日本中世史特講、日本近世史特講、日本近代史特講、歴史学研究

<選択科目>
京都の歴史、日本・アジア関係史、古文書解読、地誌学、日本藝能史、日本思想史、日本社会史、日本文化史、日本民俗学、歴史地理学

選べる4つのゼミ

● 日本古代史 ● 日本中世史 ● 日本近世史 ● 日本近代史

長期フィールドワーク

2年次後期の半年間は全員がキャンパスを離れて現地調査へ。日本・海外あわせて12の拠点から研究拠点を選択し、自身の興味や関心に合わせて設定したテーマをとことん追究します。未知の場所で多様な価値観に出会い、思考し、研究成果を他者に伝える。その経験は、将来どのような道に進んでも通用するたしかな力となります。

多様に語られる歴史の真実を自分の視点で解き明かす
歴史的な史跡が数多く残る京都。関心のあるテーマやエリアを自由に設定し、現地を訪れて調査にのぞみます。残された史料をもとに往時の街道をめぐったり、過去の遺物に触れ、民衆の生活を想像したり、体験を通して歴史を考察。新たな視点で分析を進めます。

学びのポイント
● 調査期間は半年間(海外は最長1年まで延長可)
 京都をはじめ国内や世界各地で実地調査できる
 実践的な調査力が身につく

調査の事例

  • 京都の地域や寺社を調査する

    古文書や文学作品に登場する京都の地域や寺社に足を運んで貴重な資料を見学し、現地を歩いて調査します。現代に残る寺社や地域社会と歴史・文学の繋がりも考えます。

  • 近現代の京都を調査する

    京都は言わずとしれた古都。政治的・思想的・歴史的な出来事がいくつも起こっています。それらの詳細を、フィールドワークで明らかにします。

  • 京都の江戸時代を調査する

    江戸を本拠とした徳川幕府にとっても京都は重要な都市でした。歴史と文学、双方からのアプローチで、江戸時代の京都に迫ります。

卒業論文

4年間の学びの集大成。 表現の大学ならではの展覧会も開催

4年生では全員がA4用紙20枚以上、約24,000文字の卒業論文を執筆します。ゼミ担当教員がテーマ設定から文章の構成まで1対1で指導。2月の卒業制作・論文発表展では、卒業論文や関連資料をひとりずつ展示します。

卒業論文テーマ例

  • 明治初頭の京都府政と遊所

    本論文では明治初頭における京都府の遊所に関する政策について、その方針や展開過程などを検討し、遊所と京都府政の関係を明らかにすることが第一目標である。また、そこから見える遊所の動向や内部構造にも可能な限りせまることも目指している。
    第一章では、明治三年閏十月の京都府による島原差配体制の廃止と遊所への税銭賦課を、京都府政の全体的な方針である勧業策との関係から考察した。第二章では、明治四年十一月の遊所への療病院税銭の賦課と検黴制度導入を検討し、医療の近代化のための療病院と遊所の関係を述べている。また、京都における本格的な黴毒検査のおこりである療病館についても検討を加えている。以上の第一章、第二章をふまえて第三章では、明治五年十月の「芸娼妓解放令」に対する京都府の対応を検討し、京都府がどのように「解放」を捉え、遊所を継続させようとしたかを考察している。

  • 播磨国矢野庄から見る南北朝期における民衆の動向

    南北朝期の東寺領播磨国矢野庄における百姓たちの動向には、東寺や在地の役人たちからの支配によって生じる影響と百姓たちの主体的かつ積極的な動きによって生じる影響の2つが大きく関わっていた。これら2 つの影響が生じる要因の事例として、本稿では寺田悪党の侵攻、十三日講事件、惣荘一揆を取り上げている。それぞれの事例では、紛争や支配層からの圧力がかかる場面で百姓たちの惣結合としてのつながりが強まり、次第に自治的な動きが見られるようになるとそれが乗じて一揆などにも発展していく様子が見られる。これの繰り返しによって惣結合はさらに強化され、それにつれて支配層との関係性も変化していったのである。
    本稿は以上のような百姓たちの動向について、矢野庄の支配構造や荘園で起きた事象との関連性、それに伴う荘園内での百姓たちの立ち位置の変化を考察していくものである。

その他の論文テーマ例

古代の女帝の統治方法 —則天武后と持統天皇を例に
 平安時代の服飾や調度品に見る蘇芳色
 八世紀の最盛期遣唐使の性格と特徴
 古代国家の還俗・自還俗
 中世後期の京都郊外の災害 —伏見庄・久我庄の事例
 豊臣秀吉の京都改造
 吉田兼見が見た本能寺の変
 大坂冬の陣における諸大名の動向
 彦根藩における「武士の学問」 —彦根藩主庶子の教養と、藩校「稽古館」での学び
 大坂における安政東海・南海地震の様子から紐解く鯰絵の考察
 明治初期の大阪府における教育と発達
 延享度の朝鮮通信使 —大坂での民衆との交流
 描かれた軍装 —日本画家 小早川秋聲を中心に考える戦争画とは
 原爆が広島に与えた影響 —観光資源としての原爆ドームについて
 婦人雑誌から見る大正期の大衆文化 —家庭裁縫と洋装化の関係性
 金子文子の思想 —自分自身を生きるための革命

特待生制度

4年間の授業料を全額免除する特待生制度

人文学部入学試験成績優秀特待生

金額 4年間の授業料を全額免除(入学金20万円+授業料434万円4千円)
 対象 学校推薦型選抜(公募制)・一般選抜の「学力2科目」で優秀な成績を収めた国内学生
 人数 各入試で5名以内

卒業後の進路

就職率 97.8%(2024年3月卒)

分析・洞察力や問題解決力が強みになる
就職活動など、社会に出るときに必ず問われるのは、「大学生活で何をがんばってきたのか」という問いです。4年間を通して考えを言葉で表現し、長期フィールドワークや卒業論文で設定したテーマに真剣に取り組む人文学部の学びは、将来の仕事にもつながります。
 
 めざせる職業
学芸員、 学校教員、ツアープランナー、 公務員、図書館司書、編集者、企画職、営業(総合職) など
 
 主な就職先
旅行代理店、 観光・サービス業、 NPO・NGO、 広告制作業、製造業、 流通小売業 など

 充実した就職サポート
京都精華大学では、着実にステップアップできるよう学年別のサポートや、幅広い進路に対応した充実のキャリア支援体制を築いています。
履歴書対策や面接対策など、個別指導も充実しています。

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。
 
 高等学校教諭一種免許状(地理歴史)
 中学校教諭一種免許状(社会)
 図書館司書
 博物館学芸員 

VOICE

  • 中村 蒼汰さん在学生

    明治時代の 「番組小学校」が 京都に与えた影響とは。

    地元の滋賀県で、中学校の先生になることが夢です。中学校の教員免許を取得することが大学進学の第一の目的だったので、偏差値や知名度よりも学びの内容を重視しようと考え、一番「おもしろそう」と感じた京都精華大学に入学しました。印象に残っている授業は、昭和前期のファシズムの実態を学ぶ「日本思想史」です。軍部や民衆など、さまざまな立場の人の思想を見つめながら、なぜ日本が第二次世界大戦へ向かっていったのかを考えました。はじめて知ることが多かったうえ、歴史の流れをつかめた感覚があり、とても興味深かったです。長期フィールドワークのテーマは「番組小学校」にしました。番組小学校とは、国が学校制度を定める前に、京都で生まれた小学校のこと。他の小学校とは異なるシステムをもち、オリジナルの教育が行われていました。私は、番組小学校の成り立ちに加えて、それが京都の教育や文化にどのような影響を与えたのかを調べました。ゆかりのある場所をめぐりながら調査を進めていくことは興味深く、結果をまとめることで達成感も得られました。卒業研究とは別に、興味があることを思う存分研究できる長期フィールドワークは、この学部の一番の魅力だと思います。
  • 森脇 愛翔さん在学生

    実地調査で山梨県へ。 戦国武将の人柄に迫る。

    昔から日本史が好きで、なかでも戦国時代に興味がありました。「古文書を読めば、当時の様子を深く知ることができるのでは」と考えて、古文書解読が学べる大学を探しました。最終的に京都精華大学を選んだ理由は、長期フィールドワークに挑戦してみたいと思ったからです。大学の授業では、歴史上の人物名や事件を知るだけではなく、高校の歴史の授業ではスポットライトが当たらない人たちのことや、出来事と出来事のつながりを学ぶことができます。おかげで、より立体的に歴史をとらえられるようになったと思います。長期フィールドワークのテーマは、「内藤昌秀(昌豊)の素顔とは?」にしました。武田信玄の家臣である内藤昌秀に焦点を当てた内容で、2カ月間関東地方に滞在。山梨県や群馬県などで実地調査を行い、残された逸話から昌秀の性格にアプローチしました。現在は、調査結果をまとめた卒業論文を執筆しています。古文書解読、実地調査、論文執筆は、根気のいる作業です。でも、あきらめずに取り組み続けることで、新しい発見をすることができます。卒業後は学芸員になりたいと考えています。大学生活で得た、粘り強くものごとに取り組む姿勢を、社会で生かしたいです。
  • 岩本 真一教員

    偉人ではなく民衆の言葉から、日本の近現代史を再構成

    私のゼミは「日本近現代史」がテーマ。日本の近現代史を、中学・高校で学んできた「政治史」とは異なり、わたしたちと同じような普通の人々の視点から再構成します。たとえば、日記や自分史など民衆自身の言葉で綴った「史料」を使って、偉人や英雄ではなく、その時代を生きた民衆がどのように歴史に関わったのかを、研究してほしい。いまの社会に違和感をもち、その原因を過去にさかのぼって考えたいという人に向いていると思います。
  • 吉元 加奈美教員

    史料を読み解けば人びとの営みが生き生き見えてくる

    私のゼミでは、織田・豊臣の政権期から徳川幕府時代の歴史を学びます。政治や軍事的な面だけでなく、一般の人びとの日常生活や仕事といった生き方から、当時の社会のありようを明らかにしていくのが特徴です。
    日本の近世社会では、村・町などの地縁共同体や職業共同体などが大量の史料を作成し、現在まで伝わるものも数多くあります。それらをていねいに読み解いていくことで、人びとの日々の営みと彼ら・彼女らが生きた社会に迫ることができるのです。単に知識を得ることにとどまらない、生き生きとした歴史の学びだと思っています。
    私の専門は日本近世史の都市社会史で、大坂を主な研究対象として江戸時代の都市開発と遊郭の関係について分析を進めてきました。遊廓を選んだのは、当時の女性の生き方に興味があったからですが、史料を読み解いていくと、遊女屋以外の人びとと遊廓の関係など、遊廓をとりまく社会の色々な側面が見えてきました。こうした複合的な社会の総体をとらえる史料分析が歴史研究の一番面白い点です。大学でしか学べない歴史学を、ぜひ一緒に楽しく学びましょう。
  • 吉永 隆記教員

    歴史に向き合うことで 何事も諦めない力がつく。

    古文書などの史料を読んでいくと、何だこれは?というものに多く出会います。例えば、「家の前で馬に乗るなんて無礼だ」という理由だけで、百姓に殺されてしまったお坊さんがいます。家の前で馬に乗るとなぜ無礼なのか、殺してしまうほどの理由になるのかなど、疑問はつきませんが、そうしたルールに基づいて生活していた人々が確かに過去にいたのです。史料を通して、現代の我々の価値感や慣習では全く理解不能な出来事や、人々の行動が垣間見えることが歴史研究の面白さ。歴史コースの学びは、やや地味で派手さはないイメージがあると思います。もちろんその通りですが、例えば2行ほどしか書かれていない史料から多くのことを読み取ろうとしたり、難しい内容の史料に対して、辞書類を駆使して解き明かそうとする姿勢は、何事にも堅実に諦めず取り組む力となります。歴史を学ぶことは、人間社会を学ぶこと。我々は過去の人々の作った社会の仕組みや慣習を少なからず引き継いで生活をしているので、現代社会の構造を知る上でもとても重要な分野なんですよ。過去・現在を問わず、さまざまな個性を含めて人間が好きな人を歓迎します。