在学生・卒業生

テキスタイル専門分野卒業生の林 智子さんによる個展「そして、世界は泥である」が開催中


芸術学部テキスタイル専門分野卒業生の林 智子さんによる個展「そして、世界は泥である」が、京都市中京区の京都芸術センターで開催されています。
ぜひご覧ください。


展覧会ステートメント

京都芸術センターでは、林智子の個展「そして、世界は泥である」を開催します。
 
京都に拠点を置くアーティストの林智子は、京都精華大学で染織を学んだ後、ロンドンに渡り、先端的なテクノロジーを援用しながら、人と人との間に生じる感覚やコミュニケーションをテーマにする作品を制作してきました。その後、アイルランドやスコットランドなどでの滞在を経て京都に戻った林は、豊かな自然と歴史に触れ、人の内なる自然と外に広がる自然とのつながりに意識を向けるようになります。
 
イタリアの詩人ジャコモ・レオパルディの言葉を展覧会名に冠する本展は、林のこうした関心に根差すものです。細かな粒子の夥しい集合が水気によって結び付けられた泥は、特定のかたちを持つことはありません。それは濁り、汚れたものと見なされる一方で、生命を育むこともあります。
 
そして、世界は泥である。本展で林は、世界を個と全体が有機的に結びつき、生命を循環させる運動と捉え、その中での私たちの生の在り方を思考します。私たちの内なる自然と外なる自然はどのように共鳴しているのか。本展では、社会的な秩序によって隠されている「形なきものの形」・「声なきものの声」と私たちが再び関係を取り結ぶことで、言語以前の感性を呼び覚ますことを試みます。
 
 

アーティストステートメント

ここ数年、泥に魅せられている。
きっかけは、京都盆地の北、上賀茂にある、氷河期の遺存種を残す希少な池、深泥池に通い始めたことにある。
深泥池は、貧栄養の水で出来ている為、有機物の分解が進まず、枯死した植物や生き物の遺骸が堆積し、苔類を始め多様な植物が豊かな生態系を育む場となっている。
池の畔を歩くと、無数の落ち葉が澄んだ水の中でゆっくりと朽ちながら重々に積み重なっている姿を見ることができる。その上には、細かな塵が静かに降り積り、時に魚や鹿などによって攪拌され舞い上がりながらも、また静かに澄んだ水へと戻っていく。
晴れの日が続くと、水と陸の狭間の泥の中に、虹色の皮膜が浮かびあがることもある。それは、極微の鉄バクテリアの働きによって生まれるものであり、私の心を魅了し続けてやまない存在である。
後日、その鉄バクテリアをと一緒に暮らしてみることにした。
一週間もするとその皮膜は消えてしまい、また枯れ葉を入れてやると、小さな虫たちがその葉を啄み始め、数時間後にはまたキラキラとした皮膜が輝き出した。
その様は、一見静寂に見える動かぬ泥の中で、見えない多くの小さな生き物たちが絶え間なく蠢いていることをこちらに知らせてくれる。
分解、生起、消滅といった日々繰り返される、生と死の循環の世界(フィシス)からの呼びかけのようなこの虹の膜は、われわれの意識と無意識の間の膜を私に思い起こさせた。
心の奥にある深い無意識の世界では、気づかぬとも、同じように絶え間ぬ働きが起きている。
普段は意識に上がってこない遠い記憶や、抑えていた感情も、他者との対話やある出来事をきっかけに表面に浮かび上がってきて、私たちの心を揺さぶることもある。
それは時に古い傷を抉る行為かもしれない。
しかし良悪を分別せず、そこに「確かに在る」ということを認めることは、わたしたちの心の世界の新たな循環を促してくれる一つの力になりうるのではないだろうか。

本展覧会では、その普段は隠れて見えない働きと相互作用に耳を澄まし、現代社会の中で泥と同じように普段は蔑ろにされやすく、私たちが蓋をして生きている心や意識の世界に注目し、泥の混沌の先にある、生ける自然へと鑑賞者を誘いたい。
 
林 智子

  • 日程

    2024年3月30日(土)~6月9日(日)

  • 時間

    10:00~20:00
    休館日:6月4日(火)、6/5日(水)

  • 会場

    京都芸術センター ギャラリー北・南
    〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2
  • 出演・出展者

    林 智子(芸術学部テキスタイルデザイン専門分野 卒業)

  • 予約

    不要

  • 料金

    無料

お問い合わせ先 CONTACT

京都精華大学 広報グループ

〒606-8588 京都市左京区岩倉木野町137
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Fax:075-702-5352
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※取材いただく際は、事前に広報グループまでご連絡ください。

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