在学生・卒業生

洋画専門分野卒業生の中屋敷智生さんによる個展「ばからくう -Bakaraku-」が開催中

「There is」 2024 / 油彩、アクリル、​ソリッドマーカー、テープ、キャンバス / 2610×1940mm


美術学部洋画専門分野卒業生の中屋敷智生さんによる個展「ばからくう -Bakaraku-」が、滋賀県大津市の2kw galleryで開催されています。

中屋敷さんは、国内を中心に、台湾、韓国、フランスなどのグループ展に多数参加し、アーティスト・ラン・ギャラリーや、画家同士をつないでグループショーを主宰するなどの企画も手掛けられ、多方面で活躍されています。ぜひご覧ください。


展覧会ステートメント

本展「ばからくう」は大型作品を中心に、ギャラリー全体を絵画で包み込むような空間として構成しています。この試みは、マーク・ロスコが1958年に「シーグラム壁画*」を制作した際の、「絵画ではなく場を作った」という言葉にインスピレーションを得ています。ロスコは抽象表現主義の画家でしたが、フォーマリズムには傾倒せず、独自の神秘思想やギリシャ神話などの宗教的要素を作品に取り入れました。しかし、展示空間に「場」を生成するという考えは、ともすると絵画から自立性を奪い、それらを環境装飾へと近づけてしまう危険性をはらんでいます。絵画はそのとき、鑑賞者を自らの前に立ち止まらせる力を失い、むしろ彼らを止めどない歩行へといざなうことになるでしょう。わたしたちは、シーグラム壁画でロスコが目指した「場」という理想郷に、安易に足を踏み入れるべきではないのかもしれません。
 
それを踏まえた上で、わたしが志す「絵画=場」とは、絵画を矩形から解放する試みでも、絵画を現実空間から分かつフレームを否定するものでもありません。相容れない複数のレイヤー、色彩や線の戯れによって生まれる現象としての絵画は、やがて「場」を通して他者のまなざしに遭遇します。絵画と鑑賞者は異なる志向性を持つがゆえに互いの理解を求め合い、「見る/見られる」というバトンを絶え間なく交換し続けます。このことはやがて「見るもの/見られるもの」の境界を曖昧にし、主客をゆるやかに再統合し始めるでしょう。こうしてわたしたちのまなざしは、主体も客体も、存在も無も、それら全てを包括する場所としての「絶対無」、すなわち仏教で説かれる「空」の状態へと還元されていくはずです。わたしは、自らが生み出す「絵画=場」において、「場」から「空」が紡ぎ出されるプロセスに限りなく迫りたい。そして、また、えがく、ことが、できればと考えています。
*アメリカの抽象画家、マーク・ロスコ(1903-1970)の「シーグラム壁画」と呼ばれる作品群は、50代半ばにして大家として認められたロスコが、1958年春、マンハッタンに新しくできるシーグラム・ビル内のレストラン「フォー・シーズンズ」のために制作を依頼されたものです。最高級の料理と優れた現代アートを提供するというコンセプトのもとに、ロスコがレストランの一室の装飾を任されたのでした。しかし、ロスコが新境地を開いたシーグラム壁画は、その完成後にレストランで飾られることはありませんでした。なぜなら、オープン前の店を一足先に訪れたロスコはその雰囲気に幻滅し、契約を破棄したためです。こうして一度は行き場をなくした絵画群でしたが、うち9点が1970年にロンドンのテート・ギャラリー(現テート・モダン)へ寄贈され、1990年には7点がDIC川村記念美術館へ収蔵されることになりました。以来、このふたつの美術館ではシーグラム壁画のために一室を設け、常時公開しています。そのほか、ワシントンDCのフィリップス・コレクションにある「ロスコ・ルーム」、ヒューストンの「ロスコ・チャペル」を合わせると、ロスコの作品のみで出来上がった空間は世界に4ヶ所現存しています。
 

  • 日程

    2024年6月1日 (土) ~6月23日 (日)
    休廊日 月、火、水曜日

  • 時間

    13:00~19:00
    ※最終日は17:00まで

  • 会場

    〒520-0053 滋賀県大津市音羽台3-29-1
  • 出演・出展者

    中屋敷智生(美術学部洋画専門分野 卒業)

  • 予約

    不要

お問い合わせ先 CONTACT

京都精華大学 広報グループ

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