芸術学部洋画コース卒業生の大石いずみさんによる個展「記憶の皮膚」が、千葉県流山市にあるartcenter NAZUKARI WAREHOUSEにて開催されます。ぜひ会場へお越しください。
アーティストステートメント
記憶とは一般に、次のように理解されている。
「自己の経験が保存され,その経験が後になって意識や行為のなかに想起/再現(表現)される現象あるいはそれを支える機能」である(藤井俊勝「記憶は脳のどこにあるのか?」2013)。
このように記憶は、ニューロンの発火と結合の変化によって形成され、物質としての実体を持たず、目に触れることもできない。
しかし、もし記憶が、過去が、ある朝ふいに私たちから消失したとしたらどうなるだろうか。目覚めたあとに続くはずの行為──仕事へ向かう、学校へ行くといった日々の足取りさえ、足場を失い、掬われてしまうだろう。
それは人間だけに限らない。街においても同様である。家屋の様相や信号の意味といった都市の秩序は、共有された記憶によってはじめて機能している。
そう捉えると、記憶とは生命、ひいては世界にとって、骨髄のような役割を担っているのではないだろうか。外からは見えず、触れることもできない。だがそれが失われれば、身体はたちまち立ち行かなくなる。
私はしばしば古写真を手がかりに絵を描いてきた。廃屋で埃をかぶり、蚤の市で投げ売られている写真には、被写体の素性も語られぬまま、確かな「過去の瞬間」だけが残されている。
新作では、聖女としてidol化されたジャンヌ・ダルクの像や、フランスという国をめぐる物語を描いた劇《Patrie》の場面を写した絵葉書を用いている。それらは個人の肖像であると同時に、ある時代が女性像をどのように記憶してきたのかを示す記録でもある。
長い時を経た像には気配や時間の厚みが漂うが、私の想像は決してその向こう側へ届くことがない。イメージとのより深い対話を試みるために、私は蜜蝋の半透明な膜を重ね、印画紙の光と影をなぞるように絵具を置き、像を緩ませては溶かしていく。
その行為は、可視化された像を手がかりに、触れることのできない過去に存在の輪郭=「記憶の皮膚」をあたえる試みでもある。
──洪水のようにイメージが溢れる現代において、触れることのできない過去へ、もう一度まなざしを注ぎ直すために

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日程
2026年4月4日(土)~4月26日(日)
OPEN 金曜日、土曜日、日曜日 -
時間
12:00〜18:00
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会場
〒270-0145 千葉県流山市名都借 827-3 名都借倉庫2階 -
出演・出展者
大石いずみ(芸術学部洋画コ-ス 卒業)
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予約
不要
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