
惠阪 友紀子
- 専門分野
- 日本中古文学 / 和歌・漢詩
LITERATURE
「文学とは何か」という問いから出発し、多数の文学作品を分析・分類する理論を学びます。時代や社会を映しとり、垣根を越えて後世に伝えていく文学の力について考察し、理解を深めます。
日本語の歴史的変遷、言語的特徴について、文字・表記・音韻・文法などから分析します。方言やジェンダー、世代によるバイアスなどの視点も含めて言語を考察する方法を学びます。
FIRST
1年次は大学で学ぶための基礎を身につける期間です。人文学の学びに不可欠な「言葉」の力を身につけるために、少人数のクラスに分かれて、文章を読み、話し、書く力をやしないます。また、歴史や文学、社会、国際、日本文化の多様な切り口から物事を考える経験を積み、自由な視点を育てます。
SECOND
並行して長期フィールドワークに向けて教員の指導のもと計画を立てます。後期からは半年間、キャンパスを離れて現地調査を行います。この経験で得られるのは、自ら考え、実践し、他者に伝える力。将来どのような道に進んでも生かせる、たしかな力と自信です。
THIRD
長期フィールドワークの調査報告をまとめると同時に、各コースの専門科目で深い知識と研究方法を身につけます。また、少人数のゼミに所属し、文献の読解やテーマに関する調査の発表やディスカッションに取り組みます。対話を通じて多様な意見に触れながら、思考を深めていきます。
FOURTH
4年間の学びの集大成となる、卒業論文を執筆します。書き上げた卒業論文は、2月に行う卒業制作・論文発表展で全員が展示します。学内外の人から客観的な意見をもらうことができる貴重な機会です。
関東×物語
舞台となった土地を実際に訪れ、作中に登場した場所を登場人物と同じ道順でめぐる。作品を読むだけでは気づかなかった発見を通し、作品への理解を深める。
京都×和歌
限られた文字数の言葉に、感情を乗せる和歌。作者が込めた思いを、詠まれた場所に足を運ぶことで深く理解し、表現のなかに秘められた真の意味を読み解く。
平安時代の「鳥の涙」考
本論文では、平安時代に詠まれた「鳥の涙」について考察した。研究の手法として、漢詩における鳥の詠まれ方、『古事記』と『万葉集』に見える鳥の擬人化的発想をそれぞれ確認して、「鳥の涙」の発想がどのように生まれたのか検討した。「鳥の涙」の前提には、漢詩に見える擬人化がある。これが和歌にも取り入れられ、鳥が「鳴く」に「泣く」を掛けて詠み、「泣く」から「涙」の発想が生まれたと考えられる。しかし、漢詩においては、鳥が涙を流すという発想は見出しがたく、「鳥の涙」は、鳥に人間の想いを託す日本的発想である。また、『古今和歌集』と『うつほ物語』に見える「鳥の涙」を比較することによって「鳥の涙」がどのように展開していくかを検討した。『古今和歌集』では、季節の移ろいを強調する情景的表現であったが、時代とともに少しずつ変化し、『うつほ物語』では、そこに人の感情や想いを託す表現となっていくことを明らかにした。
町田康『告白』の独自性 —河内音頭「河内十人斬り」と比較して
本論文は、町田康『告白』と『告白』が元にした河内音頭の演目「河内十人斬り」を、河内弁という言葉に注目して比較することによって、『告白』の独自性を明らかにするものである。『告白』と河内音頭「河内十人斬り」とで設定が大きく異なっている人物は、主人公城戸熊太郎の内縁の妻、縫である。縫は河内音頭では淫乱な女性として描かれているが、『告白』では清楚でどこか神秘的な女性であり、作中で熊太郎の内面を映し出す役割を持っている。 本論文では縫の置かれた社会的な立場も視野に入れて人物像を考察し、縫が熊太郎をはじめとする他の村人とは違って作中ほとんど方言を使っていないことに着目した。縫の役割を表現し、河内弁という方言の枠に押し込められた熊太郎の思弁的なキャラクターを強調するために、町田は縫に河内弁を話させなかったのではないかと考えた。縫の改変された設定は、思弁的な人物として熊太郎を描くという『告白』の独自性をもたらしたのである。