言葉がつむぐ「創造の世界」を探究する

小説や詩歌、戯曲、評論など幅広い分野の作品講読や作家研究を行います。さらに、海外作品との比較を通じて日本文学の独自性を学ぶなど、国際的な視野からも日本の文学を考察します。自分の関心に合わせて時代や作品、作家、表現方法を絞り込んで研究を深め、さらには社会的・歴史的背景などを掘り下げ、各時代の人間の心理や感性、時代の精神や文化を広く学びます。文学は人間を語り、伝える手段。言葉が伝える人間の経験や思想を読み込むことで「人間とは何か」という問いに迫ります。

めざせる職業
 編集者、ライター、小説家、学芸員、学校教員、図書館司書、校正・校閲、書籍の流通、企画職、営業(総合職) など

主な就職先
 出版社、広告制作業、Web コンテンツ制作会社、NPO・NGO、行政機関、製造業、流通小売業 など
 
取得できる資格
 高等学校教諭一種免許状(国語)、中学校教諭一種免許状(国語)、図書館司書、博物館学芸員

科目PICK UP

  • 文学概論

    「文学とは何か」という問いから出発し、多数の文学作品を分析・分類する理論を学びます。時代や社会を映しとり、垣根を越えて後世に伝えていく文学の力について考察し、理解を深めます。

  • 日本語学特講

    日本語の歴史的変遷、言語的特徴について、文字・表記・音韻・文法などから分析します。方言やジェンダー、世代によるバイアスなどの視点も含めて言語を考察する方法を学びます。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    「言葉の力」を伸ばし、 大学で学ぶための 基盤をつくる

    1年次は大学で学ぶための基礎を身につける期間です。人文学の学びに不可欠な「言葉」の力を身につけるために、少人数のクラスに分かれて、文章を読み、話し、書く力をやしないます。また、歴史や文学、社会、国際、日本文化の多様な切り口から物事を考える経験を積み、自由な視点を育てます。

  2. 2年次

    SECOND

    学外での本格的な フィールドワークへ

    並行して長期フィールドワークに向けて教員の指導のもと計画を立てます。後期からは半年間、キャンパスを離れて現地調査を行います。この経験で得られるのは、自ら考え、実践し、他者に伝える力。将来どのような道に進んでも生かせる、たしかな力と自信です。

  3. 3年次

    THIRD

    専門科目とゼミで知識を広げ思考を深める

    長期フィールドワークの調査報告をまとめると同時に、各コースの専門科目で深い知識と研究方法を身につけます。また、少人数のゼミに所属し、文献の読解やテーマに関する調査の発表やディスカッションに取り組みます。対話を通じて多様な意見に触れながら、思考を深めていきます。

  4. 4年次

    FOURTH

    4年間の学びを卒業論文として発表する

    4年間の学びの集大成となる、卒業論文を執筆します。書き上げた卒業論文は、2月に行う卒業制作・論文発表展で全員が展示します。学内外の人から客観的な意見をもらうことができる貴重な機会です。

4年間で身につく能力

  • 言葉による表現を緻密に読み解く力
  • 文学作品の特性を理解して客観的に批評する力
  • 時代や国境を越えて人間の心情を想像し、歩み寄る力

専門科目の特徴

和歌、説話、小説…。 広く文学表現を学び、 作品分析の力を磨く

上代・中古・中世・近世・近代と広く日本の文学研究が可能です。批評理論や比較文学など、作品を分析する力を磨く科目のほか、小説や詩歌、説話・伝承など多様な文学表現も学ぶことができます。

<必修科目>
文学概論、文学研究、日本上代文学講読、日本中古文学講読、日本中世文学講読、日本近世文学講読、日本近代文学講読
 
<選択科目>
説話・口承文学、日本文学史漢文学、くずし字読解、古典文法、詩歌論、書誌学、書道、日本語学特講、比較文学、批評理論

選べる6つのゼミ

● 日本上代文学 ● 日本中古文学 ● 日本中世文学 ● 日本近世文学 ● 日本近代文学 ● 比較文学

長期フィールドワーク

2年次後期の半年間は全員がキャンパスを離れて現地調査へ。日本・海外あわせて12の拠点から研究拠点を選択し、自身の興味や関心に合わせて設定したテーマをとことん追究します。未知の場所で多様な価値観に出会い、思考し、研究成果を他者に伝える。その経験は、将来どのような道に進んでも通用するたしかな力となります。

言葉がつむぐ世界をよりリアルに体験し、作品への理解を深める
作品が生まれた土地や舞台、作家ゆかりの場所をたどりながら、言葉で記された表現をより深く理解します。作品を読み解くと、時代や世界を超えて作家のメッセージを受け取ることができるはず。日本国内や海外で、作品の豊かな世界観を体験を通して学びます。

学びのポイント
● 調査期間は半年間(海外は最長1年まで延長可)
 京都をはじめ国内や世界各地で実地調査できる
 実践的な調査力が身につく

調査の事例

  • 関東×物語

    舞台となった土地を実際に訪れ、作中に登場した場所を登場人物と同じ道順でめぐる。作品を読むだけでは気づかなかった発見を通し、作品への理解を深める。

  • 京都×和歌

    限られた文字数の言葉に、感情を乗せる和歌。作者が込めた思いを、詠まれた場所に足を運ぶことで深く理解し、表現のなかに秘められた真の意味を読み解く。

卒業論文

4年間の学びの集大成。 表現の大学ならではの展覧会も開催

4年生では全員がA4用紙20枚以上、約24,000文字の卒業論文を執筆します。ゼミ担当教員がテーマ設定から文章の構成まで1対1で指導。2月の卒業制作・論文発表展では、卒業論文や関連資料をひとりずつ展示します。

テーマ例

  • 平安時代の「鳥の涙」考

    本論文では、平安時代に詠まれた「鳥の涙」について考察した。研究の手法として、漢詩における鳥の詠まれ方、『古事記』と『万葉集』に見える鳥の擬人化的発想をそれぞれ確認して、「鳥の涙」の発想がどのように生まれたのか検討した。「鳥の涙」の前提には、漢詩に見える擬人化がある。これが和歌にも取り入れられ、鳥が「鳴く」に「泣く」を掛けて詠み、「泣く」から「涙」の発想が生まれたと考えられる。しかし、漢詩においては、鳥が涙を流すという発想は見出しがたく、「鳥の涙」は、鳥に人間の想いを託す日本的発想である。また、『古今和歌集』と『うつほ物語』に見える「鳥の涙」を比較することによって「鳥の涙」がどのように展開していくかを検討した。『古今和歌集』では、季節の移ろいを強調する情景的表現であったが、時代とともに少しずつ変化し、『うつほ物語』では、そこに人の感情や想いを託す表現となっていくことを明らかにした。

  • 町田康『告白』の独自性 —河内音頭「河内十人斬り」と比較して

    本論文は、町田康『告白』と『告白』が元にした河内音頭の演目「河内十人斬り」を、河内弁という言葉に注目して比較することによって、『告白』の独自性を明らかにするものである。『告白』と河内音頭「河内十人斬り」とで設定が大きく異なっている人物は、主人公城戸熊太郎の内縁の妻、縫である。縫は河内音頭では淫乱な女性として描かれているが、『告白』では清楚でどこか神秘的な女性であり、作中で熊太郎の内面を映し出す役割を持っている。 本論文では縫の置かれた社会的な立場も視野に入れて人物像を考察し、縫が熊太郎をはじめとする他の村人とは違って作中ほとんど方言を使っていないことに着目した。縫の役割を表現し、河内弁という方言の枠に押し込められた熊太郎の思弁的なキャラクターを強調するために、町田は縫に河内弁を話させなかったのではないかと考えた。縫の改変された設定は、思弁的な人物として熊太郎を描くという『告白』の独自性をもたらしたのである。

その他の論文テーマ例

 日本神話における聖数「八(や)」の意味
 和歌と漢詩における「月」 —十五夜
 平安時代の友情観 —紫式部を中心に
 桜の表現 —西行を中心に
 古典、絵巻からみる庶民の住まい
 隠形の男と百鬼夜行
 能・歌舞伎に見る六歌仙の変遷 —大伴黒主と小野小町を中心に
 北海道アイヌ文学における「善神」と「悪神」
 『裡家筭見通坐敷』における京伝店の描写
 学校教材の視点から見る桃太郎
 差別と文学 島崎藤村『破戒』から見る差別を扱うという事
 三島由紀夫『金閣寺』に現れた「死」と「死地」—英語訳版と比較して
 武者小路実篤の目指した理想郷 「新しい村」から見る明治~昭和の身分差
 メディアと流行語 —お笑い芸人が生む言葉の広がり
 〈水〉の心象表現が持つ想像力の可能性 —『崖の上のポニョ』の海から見る水のファンタジー
 西尾維新 『傷物語』におけるキャラクター造形 —交差する自己犠牲を巡って
 坂東眞砂子作品から見る犬神伝承の創作

特待生制度

4年間の授業料を全額免除する特待生制度

人文学部入学試験成績優秀特待生

金額 4年間の授業料を全額免除(入学金20万円+授業料434万円4千円)
 対象 学校推薦型選抜(公募制)・一般選抜の「学力2科目」で優秀な成績を収めた国内学生
 人数 各入試で5名以内

卒業後の進路

就職率 97.8%(2024年3月卒)

分析・洞察力や問題解決力が強みになる
人文学科で培われる、文化や社会現象を分析する力や自ら問題を発見し解決する力、グローバルな視点で日本や京都文化を洞察する力は、幅広い分野で応用できます。編集者や学芸員、コンテンツ制作者はもちろん、ITや文化事業、教育産業、商品企画、観光など、今後の日本ビジネスの中心となるあらゆる業種で必要とされるでしょう。

めざせる職業
編集者、 ライター、 小説家、 学芸員、 学校教員、図書館司書、校正・校閲、書籍の流通、企画職、営業(総合職) など
 
 主な就職先
出版社、広告制作業、 Web コンテンツ制作会社、NPO・NGO、行政機関、 製造業、 流通小売業、教育機関 など
 
 充実した就職サポート
京都精華大学では、着実にステップアップできるよう学年別のサポートや、幅広い進路に対応した充実のキャリア支援体制を築いています。
履歴書対策や面接対策など、個別指導も充実しています。
京都精華大学の進路・就職サポート

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。

 高等学校教諭一種免許状(国語)
 中学校教諭一種免許状(国語)
 図書館司書
 博物館学芸員

VOICE

  • 高野 莞さん在学生

    小説のなかで描かれる京都と実際の京都を比較して

    幼い頃から読書と寺社めぐりが好きでした。神社仏閣が多い京都という立地と、文学を研究できる学部がある点に惹かれて、京都精華大学に入学しました。大学の授業は、知的好奇心を刺激するものばかりです。特におもしろかったのは、言語とは何かを改めて考える「言語学」や、物語の構造や表現技法を分析する「文学概論」など。1年次には個人的な興味で、ある小説の舞台になっている神奈川県藤沢市を訪れ、観光課の方にお話を聞きました。私が「ライトノベル作品と聖地巡礼」というテーマに興味をもつようになったのは、この経験がきっかけです。長期フィールドワークでは、京都を舞台にしたライトノベル作品を取り上げ、作品に登場する土地を調査しました。文字で表現される町の様子と、実際の町の様子を比較して回るうちに、京都の新たな魅力が見えてくる気がしました。好きなことを探究して、その成果を発表できる長期フィールドワークは、興味関心と学問がつながる特別な体験でした。みなさんにおすすめしたいです。卒業後の目標は、司書になること。物語と出会える図書館という施設を盛り上げることで、地域に暮らす人びとに貢献したいです。
  • 塩畑 奈緒さん在学生

    和歌で詠まれる「鳥の涙」表現が生まれた背景を探る

    神社仏閣めぐりが趣味です。「京都に住んでみたい」という思いがあり、京都精華大学に入学しました。思い入れのある授業は、1年次の「国内ショートプログラム」です。京都嵯峨野の清涼寺で行われる嵯峨大念佛狂言について学ぶ内容で、実際に使用している狂言の面をつけたり、演目「土蜘蛛」で使う蜘蛛の糸を投げたりと、貴重な体験ができました。体験して学ぶことで、狂言や京都への理解が一層深まったと思います。現在は、卒業論文を執筆しています。テーマは「平安時代に詠まれた『鳥の涙』考」です。平安時代の和歌や物語では、「鳥の涙」という表現が使われることがあります。鶯や雁が涙を流す姿が描かれるのですが、この表現が生まれた背景を調べています。奈良時代の文学や漢詩なども調査対象として、古典文学の世界を思いきり楽しみながら研究を進めています。この4年間で、和歌、歴史、京都など、元から好きだった分野がさらに好きになりました。これも、学生の興味を広げ、家族のように温かく寄り添って指導をしてくださった先生方のおかげ。心から感謝しています。卒業後は石川県の旅館で働きます。人の心を癒す「旅館」という職場で、自分を成長させていきたいです。
  • 是澤 範三教員

    神話や古代のことばの成り立ちから歴史と文化を学ぶ

    私が担当するのは「上代文学と神話、日本語の歴史」。『古事記』の神話を読んで内容を解釈し、なぜこのような神話が創られたのかを考えたり、古代日本語の語源を調査したりするゼミです。日本にはたくさんの神社がありますが、日本の神様や神話、古代のことばの成り立ちを知ることは、日本の歴史と文化を学ぶことでもあります。ことばの成り立ちを掘り下げたい人、神様と神話や歴史、神社やお寺に興味のある人におすすめです。
  • 三原 尚子教員

    文学作品を通して 未知の生活や感情を体験する。

    文学のおもしろさは、作品の読解を通じて、自分とはまったく異なる時代・立場・土地で暮らす人々の生活や感情を体験できるところにあります。京都精華大学の文学コースには、さまざまな専門分野を研究する教員が在籍しています。そして、学生と教員が交流しやすいアットホームな雰囲気もあります。ここで学ぶみなさんには、多彩なジャンルの文学に触れられる環境で、たくさんの作品と出会い、広い視野を養ってほしいと思います。
    私は、俳諧における受容について研究しています。たとえば、松尾芭蕉はなぜ有名になったのか、作品はどう読まれてきたのか、芭蕉という人物はどのように理解されてきたのか、そういったことに関心があります。作品そのものよりも受容を研究対象にした理由は、私が文学だけでなく、歴史学や社会学にも関心があったからだと思います。文学コースで学ぶなら、ぜひ幅広い分野に興味をもち、いろいろな世界に触れてみてください。文学とは関係がなさそうな趣味の世界でも構いません。友達や教員がおすすめしたものも試してみましょう。すべての経験が文学の研究に役立つはずです。私の座右の銘は、「やれることはすべてやる」。みなさんも、臆することなく、やれることはすべてやってみてください。