自分が生きる「いま」を読み解き、社会の課題を見つける

研究対象は、あなた自身とあなたの身のまわりにあるすべて。個人と集団との関係のなかで発生する諸問題。教育、環境、メディア、ジェンダー、移民、宗教、貧困、戦争など、みずからの悩みや疑問、身近な問題を入り口に、社会現象や人間の行動の要因を掘り下げていきます。
これらの問題を解明するのに必要となる、社会を多様な側面からとらえる力を身につけるため、社会学の理論や方法を歴史的背景とともに学びます。さらに、現地におもむき五感を働かせて調査するフィールドワークの手法などを習得することで、数値やデータの分析だけでは気づきにくい問題の本質に迫る力をやしないます。

めざせる職業
 編集者、 記者、公務員、 NPO・NGO 職員、 学芸員、図書館司書、学校教員、 教育機関職員、 企画職、営業(総合職) など
 
主な就職先
 出版社、新聞社、広告会社、Web コンテンツ制作会社、医療・福祉、観光・サービス業、金融業、NPO・NGO など
 
取得できる資格
 高等学校教諭一種免許状(公民)、中学校教諭一種免許状(社会)、図書館司書、博物館学芸員

科目PICK UP

  • 多文化共生論

    人種や思想、年代、性、身体的機能などの多様な人びとがどのように共生していくことができるのか、その意義と方法を考えます。

  • 社会藝術論

    藝術と宗教、人類学などさまざまな切り口から現代の日本の事例を中心に、欧米やアジアの国々も参照しながら藝術と社会の関わりについて考えます。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    「言葉の力」を伸ばし、 大学で学ぶための 基盤をつくる

    1年次は大学で学ぶための基礎を身につける期間です。人文学の学びに不可欠な「言葉」の力を身につけるために、少人数のクラスに分かれて、文章を読み、話し、書く力をやしないます。また、歴史や文学、社会、国際、日本文化の多様な切り口から物事を考える経験を積み、自由な視点を育てます。

  2. 2年次

    SECOND

    学外での本格的な フィールドワークへ

    並行して長期フィールドワークに向けて教員の指導のもと計画を立てます。後期からは半年間、キャンパスを離れて現地調査を行います。この経験で得られるのは、自ら考え、実践し、他者に伝える力。将来どのような道に進んでも生かせる、たしかな力と自信です。

  3. 3年次

    THIRD

    専門科目とゼミで知識を広げ思考を深める

    長期フィールドワークの調査報告をまとめると同時に、各コースの専門科目で深い知識と研究方法を身につけます。また、少人数のゼミに所属し、文献の読解やテーマに関する調査の発表やディスカッションに取り組みます。対話を通じて多様な意見に触れながら、思考を深めていきます。

  4. 4年次

    FOURTH

    4年間の学びを卒業論文として発表する

    4年間の学びの集大成となる、卒業論文を執筆します。書き上げた卒業論文は、2月に行う卒業制作・論文発表展で全員が展示します。学内外の人から客観的な意見をもらうことができる貴重な機会です。

4年間で身につく能力

  • 社会構造を分析し、課題を発見する力
  • 課題解決のアイデアを生み出す思考力
  • 現場で判断し、主体的に行動する力

専門科目の特徴

人間と社会の問題を広いテーマから学びよりよい姿を提案する

ジェンダーや貧困、環境、災害、戦争など幅広いテーマで、現代社会のさまざまな課題を知ることができます。具体的な事例から人間の権利や安全保障まで広く学び、現実の社会に研究を応用し、提案するための力を磨きます。
 
<必修科目>
社会学概論、社会学研究、現代社会特講1~5
 
<選択科目>
ジェンダー論、地域社会論、社会藝術論、国際関係論、社会学特講、社会支援論、社会思想、社会調査法、大衆文化論、多文化共生論、

選べる5つのゼミ

● 思想 ● 文化 ● 地域 ● 共生 ● 福祉

長期フィールドワーク

2年次後期の半年間は全員がキャンパスを離れて現地調査へ。日本・海外あわせて12の拠点から研究拠点を選択し、自身の興味や関心に合わせて設定したテーマをとことん追究します。未知の場所で多様な価値観に出会い、思考し、研究成果を他者に伝える。その経験は、将来どのような道に進んでも通用するたしかな力となります。

社会問題の本質を探り具体的な解決方法を自分の力で見つけ出す
社会コースが扱うテーマは非常に幅広いのが特長です。テレビで話題になっている社会問題だけでなく、身近にある疑問も研究対象。なぜそのような問題が起きているのか、どうすれば解決することができるのかを、インタビュー調査などの手法を通して分析します。

学びのポイント
● 調査期間は半年間(海外は最長1年まで延長可)
 京都をはじめ国内や世界各地で実地調査できる
 実践的な調査力が身につく
  • 京都×観光

    京都で問題化する「オーバーツーリズム」について、公共交通機関とタクシー利用のそれぞれで実態調査をし、持続可能な観光地産業について考える。

  • 沖縄×教育

    全国で最も不登校者の割合が高い沖縄。支援の取り組みや、教育のあり方を現地の行政や教育関係者へのインタビューを通じて分析する。

  • 京都×ビジネス

    100年以上続く老舗企業だけでなく、いわゆるベンチャー企業にも目を向け、企業と社会との関わりについて調査します。

卒業論文テーマ例

  • 「相模原障害者施設殺傷事件」 に関する言説の分析

    2016 年7 月26 日、神奈川県相模原市にある知的障害者施設「津久井やまゆり園」において大規模な殺傷事件が起きた。入所者19 名が殺害され、施設職員を含む26 名が重軽症を負ったこの事件は、犯人の植松聖が施設の元職員であったこと、「障害者は不幸を生むだけ」という発言をしたことなどから大きな注目を集めた。植松の上記の発言や犯行へ賛同するインターネット上の声は、障害者の存在に肯定的な立場をとる人々によって「優生思想」や「障害者差別」という言葉をあてがわれ批判されてきた。しかし、それらは思想や差別など本質的で解決の目処のたたないものとしてこの事件を捉えることにもつながる。よって本稿では「優生思想」や「障害者差別」など、この事件について“語られた” ことではなく、障害者の存在に肯定的なもの・否定的なものも含め、それらが“なぜ語られたのか” について注目する。そのことによって植松やそれに共感する者のみを批判の対象とするのではなく、私たちが無意識のうちに前提としている構造の問題としてこの事件を捉え直す。

  • 「自分がいなくなる感覚」を考える —多様性と向き合うために

    本論文は、私が経験した「自分がいなくなる感覚」という辛さや苦しさを起点に、ジュディス・バトラーの諸理論を整理することで、「私がここに存在していること」がいかなる方法で実現可能か、ひとつの視座を示すことを目的にしている。バトラーは,ジェンダーのパフォーマティヴな性質——言語を伴う行為の反覆によって徐々に形成されるという性質——を論じることを通し、ジェンダーの虚構性をあばき、攪乱可能なものとしての「性」を提示した。ジェンダーを筆頭に、アイデンティティが構築される過程では様々な「時間性」が作用している。その大部分が「規範」となり、私たちを説明可能な存在にするのだ。私たちがみな「規範」の中でのみ認識可能な存在であるとすれば、「規範」という焦点を言語によって「脱中心化」することが重要となるのではないだろうか。「不確実性」を受容し、多様な語りの「型」が生まれていくときにこ、私たちは精彩を放つのである.

その他の論文テーマ例

 日本のコンビニにおける食品ロスの現状とその課題
 不登校の実態から考える新たな学校教育システム —教室での対面授業の必要性とともに
 現代社会のソーシャルメディア考察 —メディアを構成する個人に対する社会的役割
 現代日本の大衆社会とデモクラシー —個人と政府の関係についての考察
 現代社会における「手書き文字」の意味 —社会的構築主義からの考察
 日本野球における女子の存在 —女性プレーヤーの活躍はいつになるのか
 京都市のベンチャー企業の現状と課題
 地方創生SDGs の現状と課題 —徳島市を事例に
 南木曽町田立村における淡水魚養殖業の成立と養殖事業者の職住一体生活の実態とその可能性に関する研究
 滋賀県草津市野路地区における空き家の現状と今後の方策について
 獣害対策としてのジビエ普及における猟師の役割
 虫は日本の食糧を救いうるのか。

特待生制度

4年間の授業料を全額免除する特待生制度

人文学部入学試験成績優秀特待生

金額 4年間の授業料を全額免除(入学金20万円+授業料434万円4千円)
 対象 学校推薦型選抜(公募制)・一般選抜の「学力2科目」で優秀な成績を収めた国内学生
 人数 各入試で5名以内

卒業後の進路

就職率 97.8%(2024年3月卒)

分析・洞察力や問題解決力が強みになる
人文学科で培われる、文化や社会現象を分析する力や自ら問題を発見し解決する力、グローバルな視点で日本や京都文化を洞察する力は、幅広い分野で応用できます。編集者や学芸員、コンテンツ制作者はもちろん、ITや文化事業、教育産業、商品企画、観光など、今後の日本ビジネスの中心となるあらゆる業種で必要とされるでしょう。

 めざせる職業
編集者、 記者、公務員、 NPO・NGO 職員、 学芸員、図書館司書、学校教員、 教育機関職員、 企画職、営業(総合職) など
 
 主な就職先
出版社、新聞社、広告会社、Web コンテンツ制作会社、医療・福祉、観光・サービス業、金融業、NPO・NGO など
 
 充実した就職サポート
京都精華大学では、着実にステップアップできるよう学年別のサポートや、幅広い進路に対応した充実のキャリア支援体制を築いています。履歴書対策や面接対策など、個別指導も充実しています。

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。
 
 高等学校教諭一種免許状(公民)
 中学校教諭一種免許状(社会)
 図書館司書
 博物館学芸員

VOICE

  • 地本 あかねさん在学生

    より良い社会の実現を願い 身近な問題を卒業論文に

    高校生のときから「ジェンダー論を学んでみたい」と考えており、社会学が学べる大学を探していました。京都精華大学を選んだのは、オープンキャンパスに参加したとき、雰囲気が肌に合うと感じたからです。長期フィールドワークでは、アートセラピーのワークショップを企画することを目標に、セラピストにインタビューしたり、教会で取材を行ったりしました。行く先々で新しい発見があり、期間中は常に知的好奇心が刺激されているような感覚でした。講義を受けるだけでは得られない学びや気づきがたくさん得られる長期フィールドワークは、大学生活のなかでも思い出深い時間です。卒業論文のテーマは、「現代の若者におけるパートナーシップのあり方について」にしました。テーマを悩んでいると、先生から「社会的意義のある論文を書きなさい」という助言がありました。それで、誰もが生きやすい社会に少しでも近づくことを願って、自分や同世代の人が直面し得る問題を取り上げたんです。卒業後は、障害福祉の現場で働く予定です。私には、「人間を理解したい」という気持ちがあります。人と深く関わることができる福祉の世界で、人間とは何か、自分とは何かを追求していきたいです。
  • 北田 幸司郎さん在学生

    「好きなこと」の 研究ができる自由な学習環境が魅力

    将来の目標は、高校の先生になることです。社会コースを選んだ理由は、世の中で起きているさまざまな問題について知り、その問題を多角的にとらえる力を身につけたいと考えたからです。この学部の魅力は、好きなことを思いきり学べるところ。私の長期フィールドワークのテーマは、御朱印についてです。期間中は、神社仏閣を実際にめぐり、御朱印の起源や流行について調べました。歩きながら疑問を見つけたり、現地で新しいことに気づいたりと、自分で学びを進めていくのは楽しかったです。得るものが多い授業でした。現在は、卒業論文を執筆中です。テーマは学校教育。いじめ、教員の労働問題、ブラック校則という3つの観点から、より良い教育環境について考える内容です。将来教員として働くことを見すえて、現場の課題とじっくり向き合いたいと考えています。私たちがのびのび研究できるのは、それを丁寧に支えてくださる先生方のおかげです。研究室を訪問すると、先生方はいつでも温かく学生を迎え、質問や疑問に答えてくださいます。京都精華大学は、やりたいことをとことん追求させてくれる大学です。何でも挑戦して、充実した学生生活を送ってください。
  • 田村 有香教員

    常識にとらわれず物事の裏側を調べ、地域の未来を描く。

    形が不ぞろい、傷があるなどの理由で出荷されず、畑に捨てられる「規格外」の野菜について研究しています。規格が厳しすぎるからという説がありますが、調べていくと、正しくないことがわかってきました。廃棄野菜の量は3~4割と言われますが、実態は野菜によってずいぶん異なり、実際に計量したデータもないため、調査は新しい発見に満ちています。もう一つのテーマは京北宇津地域で行っている、住民と学生の協働による地域活性化の取り組みです。高齢化と過疎化が進む農村ですが、美しく魅力的で、住民も元気です。地域課題を発見し、解決に向けてともに動き、結果を検証して、また新たな課題を見つける……これを長期間続けています。
    こうした研究を踏まえ、私のゼミでは身近な物事について徹底的に調べる「モノやコトの裏側追跡」、地域に学び未来をデザインする「地域連携」に取り組みます。どちらの研究も「当たり前」や「常識」にとらわれず自由に発想できる人、柔軟に工夫できる人が向いていると思います。常識は一つの「仮説」でしかありません。真実はどこにあるのか突き止める学問上の旅は、とてもエキサイティングです。
  • 山田 創平教員

    いま抱えている「しんどさ」が、社会を変える原動力になる

    表現や芸術を切り口にして、社会的排除や差別といった社会問題を考えていきます。いま、生活のなかで何かの困難や課題、あるいはしんどさを抱えている人に伝えたいのは、その感覚や思いがこれからの社会を変えていく重要な原動力になる、ということ。大学は自分が考えたいことを、時間を気にせずいくらでも考えられる場です。みなさんに社会の問題を「自分のこと」として研究に取り組んでもらいたいと思っています。